1972年に製作され大ヒットしたゴッドファーザーの続編だ。続編というと単なる続き物のようだが、この映画は、前作をさらに格調高く幅の広い作品にした映画だ。パート2では、若き日のビトー・コルレオーネの生い立ちとサクセスストーリーと交差しながら、ビトーの跡を継ぎドンとなったマイケルの苦悩を描いた作品となっている。原作は前作と同様マリオ・プーゾ、脚本はコッポラとマリオ・プーゾが手がけた。音楽はやはりニーノ・ロータ、指揮はコッポラの父カーマイン・コッポラ。
ビトの家族は、シシリーのコルシカ島で暮らしていたが、父や兄がコルレオーネ村のドン・チッチオに逆らったことから命を落とし、チッチオはビトがやがて父や兄たちの復讐をする前に命を奪おうとする。しかし、母親が命明けで彼を守り、ビトはアメリカへ移民として島を離れていく。新天地アメリカに着いたビトは、係官の勘違いからビト・アンドリーニではなく、出身のコルレオーネ村の名前が付けられ、ビト・コルレオーネを名乗ることとなった。ビトが天然痘にかかっていた事から隔離されるのだが、その窓から見える自由の女神と彼の姿が窓に映るシーンは哀感のある素晴らしいシーンのひとつだ。
コルレオーネ一家はニューヨークからネバダに家を移し、ファミリーを守り勢力を拡大するため、上院議員を抱き込みホテルやカジノの勢力を拡大していた。映画の冒頭は、彼の邸宅でのパーティシーンから始まる。コニーは、マイケルを憎み色んな男性と関係を持っては、彼に金の無心をしに着ていた。ファミリーは大きくなったが、合法的な組織に変えられることなく、信じられるのは義兄のヘイゲンだけの状態になっていた。
この映画では、若き日のビトーと現在のマイケルのストーリーが交差して進行するため、編集にはかなり苦労したそうだ。初回の試写では、ストーリーが分かりにくいためか評判が悪く、場面展開をする際もマイケルのシーンとビトのシーンをディゾルブして、なるべく分かりやすく整理をしたそうだ。コッポラは、ビトには前作のソニー役のカメラテストから決めていたロバート・デ・ニーロを配役した。しかし、前回と同様にパラマウントは難色を示したそうだ。
若き日のビトーが成り上がるきっかけとなった地元のヤクザであるファヌーチを射殺するシーンは、有名なシーンだが、この当時の町並みを再現するため、現在ある街に協力してもらい、外装から通りにある電柱や該当までカバーを掛けたりしたそうだ。コッポラの完璧主義は美術面でも徹底している。デ・ニーロはブランドのイメージを損なわないように、やや小さめの入れ歯をはめて仕草も工夫したそうだ。あの強烈なイメージがあるだけに、パラマウントがすんなり納得しなかったのも頷けるが、デ・ニーロでなければ、この役をこなせなかっただろう。
この映画でマイケルが命を狙われ、窮地に追い込まれるが、影で糸を引いていたのは父とも親交のあったマイアミのハイマン・ロスだ。兄のフレドは、彼らにそそのかされ、思いもかけずマイケルを裏切ることとなる。キューバの革命の日にそのことを知ったマイケル。
この映画は、アル・パチーノもデ・ニーロも本当に素晴らしいが、フレドを演じたジョン・カザールも素晴らしかった。気が弱く優しい性格であるが故に兄でありながら弟に面倒を見てもらっている遣り切れなさや、家族を愛している姿が切なかった。残念ながら、ジョン・カザールは1978年のディア・ハンターを最後に永眠した。
ちなみに若き日のドン・ビトーの髭は、デ・ニーロの提案だったそうだ。これには、スタッフの中でも賛否両論があり、最終的にはコインを投げて表が出て髭を付けると決まったというお話だ。
この映画の後半には、印象深いシーンが2つあるそのひとつが、マイケルが昔を回想するシーンだ。ビトの誕生日に家族やテシオ、カルロが集い、ビトの帰りを待つシーンだ。当初は、ブランドも特別出演する予定であったが、契約の問題で出演が実現せず、苦肉の策でそういう脚本に変更したそうだ。しかし、ブランドが姿を見せなかったことで、余計にブランドの存在感を示すシーンになったわけだ。
もうひとつは、フレドがマイケルの息子アンソニーに釣りのコツを教えるシーンだ。フレドは、マイケルと和解し、アンソニーの相手をして平穏な時間を持つことができた。しかし、マイケルはファミリーを守るには、兄は弱すぎることを許すことができない。湖の上で、釣りをする前に祈りを唱えているフレド。やがて、一発の銃声が聞こえる。なんとも悲しいシーンだ。
この2作目は、マイケルが大事なものを守ろうとしてすべてを失っていく物語だ。ふつう、映画は2作目は味が落ち、新鮮味も欠けるものだが、このゴッドファーザーに限っては、必然性のあった続編だったと思う。よく練られたプロット、前作同様にすべての面でレベルの高い仕上がりに加え、若き日のビトにもスポットを当てるといった離れ業までやってのけた。
それにしても、フランシス・フォード・コッポラはスターを発掘する能力に長けた人はいない。彼の映画で、アウトサイダーという映画があったが、当時無名だった若手俳優を多く起用している。その出演者の名前を挙げただけで、その目の確かさがわかる。
C・トーマス・ハウエル、マット・ディロン、ラルフ・マッチオ、パトリック・スウェイジ、ロブ・ロウ、エミリオ・エステヴェス、トム・クルーズ、ダイアン・レイン、レイフ・ギャレット。
この映画の16年後にパート3が製作されたが 、正直なところ月日が経ちすぎたように思える。よくできた映画だが、パート3で贖罪する心境の変化に至ったパート2と3の間が抜け落ちている感じが否めない。
それにしても、ゴッドファーザーって、奥の深い面白い映画だなぁ。
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