2010年2月26日金曜日

ALWAYS 三丁目の夕日



ALWAYS 三丁目の夕日。
携帯もパソコンもTVもなかったのにどうしてあんなに楽しかったのだろう…。

東京タワー建設中の昭和33年、東京の下町で活き活きと暮らす人々の日常を描いた西岸良平原作の同名漫画の映画化作品だ。
監督はジュブナイルで監督デビューを飾ったVFXのクリエイターでもある山崎貴監督。

◆キャスト、スタッフ
出演: 吉岡秀隆、堤真一、小雪、堀北真希、もたいまさこ、三浦友和、薬師丸ひろ子、須賀健太、小清水一揮、マギー、温水洋一、神戸浩、飯田基祐、小木茂光、益岡徹、小日向文世
原作:西岸良平
監督・VFX:山崎 貴
脚本:山崎 貴、古沢良太
音楽:佐藤直紀
主題歌:D-51「ALWAYS」(PONY CANYON)
企画・制作プロダクション:ROBOT
製作:「ALWAYS 三丁目の夕日」製作委員会

映画は、懐かしい東宝スコープのタイトルマークから始まり、少年達が飛ばした模型ヒコーキが、下町の上を飛び、町を抜けて大通りに飛んでいく。それを追いかける少年達。このオープニングタイトルまでのシーンをワンショットで映していた。佐藤直紀の優しい音楽が重なり、タイトルバックの向こうには建設中の東京タワーが見え、大通りは都電や懐かしい車が行きかっている。映画の冒頭から、この世界に一気に引き込まれていった。
このオープニングは、当初こま切れで作られていたが、阿部プロデューサーの一言から、山崎監督をはじめVFXを担当する面々が奮起して苦労して作り上げた映像だ。下町のセットもオープニングの大通りに繋ぐために設計されていたわけではなく、シーンの途中をCGで繋ぐといった細かく複雑な作業を行わなければならなかったそうだ。大通りを走る都電などは、フルCGで描かれているそうだ。
観ていてもどこからが本物でどこからがCGなのかは区別が出来ない素晴らしい出来上がりだ。メーキング映像の中でVFX担当の女性が言っていたが、特殊効果のことを気にせずに楽しんで観てもらえることが何よりの望みということだ。VFXはふんだんに使われているが、彼女の言葉のとおり、VFXを気にすることなく昭和33年の下町に暮らす人たちの世界に入り込んでいった。

映画は、下町の小さな自動車工場を営む鈴木オート一家とその向かいの駄菓子屋に住む売れない小説家の茶川を中心に進む。堤真一が演ずる鈴木オートの社長の則文は、まっすぐで表裏のない人間。腹もすぐ立てるが、思いやりのある人物。優しい奥さんの薬師丸ひろ子と一人息子の一平(小清水一揮)の3人家族。この鈴木オートに集団就職で青森から来た女の子の六ちゃん(堀北真希)が加わり、この時代に見かけたエピソードが展開される。初めてテレビや電気冷蔵庫が家にきた様子や、下町の四季の風景が映し出されていた。
吉岡秀隆が演ずる茶川は、親から勘当されおばあさんと駄菓子屋で暮らしていたが、おばあさんも亡くなり、駄菓子屋を営む傍ら、少年雑誌に小説を連載し、芥川賞受賞を夢見る男。飲み屋のヒロミ(小雪)から身寄りのない少年の淳之介(須賀健太)を預かることになり、最初は迷惑がっているのだが、徐々に心を通わせあって絆を深めていく。
この2人の生活を中心にタバコ屋のキンさん(もたいまさこ)や町医者の宅間先生(三浦友和)が加わり、当時の日常が伝わってくる。

特に鈴木家にテレビが来てみんなでテレビを見るシーンはこの時代を象徴していて面白かった。
登場人物はみんな活き活きとしていて、夢のある時代。キャッチコピーのとおり、携帯もパソコンもないが、本当に楽しそうなのだ。

VFX満載の映画だが、VFXはこういう風に使うものという良いお手本になる懐かしくて面白くて心に響く素敵な作品だった。
それにしても、堤真一は良い役者だな。吉岡君もすごく良かったが、堤真一が良い味を出していて、感心してしまった。
この優しい映画、ALWAYS 三丁目の夕日は、おすすめの映画だ。


以下は見終った人向け(ネタバレあり)

映画の中で好きなシーンはたくさんあったが、この2つは良いシーンだった。

◆茶川が鈴木オートからお金を借りて、淳之介のためにクリスマスプレゼントをする。
淳之介は、母親に捨てられこれまでクリスマスにプレゼントなんかもらった事のない少年。茶川は、淳之介のために鈴木オートからお金を借り、サンタに化けた宅間先生やひろみの協力を得て、淳之介が欲しがっていた万年筆をプレゼントする。
このときの2人の様子が微笑ましい。淳之介は有頂天で茶川にサンタが本当にいたことを興奮して話す。その様子を見て、茶川も笑みをこぼす。淳之介が、笑顔で万年筆を見つめるシーンに涙が出てきた。

◆指環のケースしか買えなかった茶川に見えない指輪をつけ光にかざし微笑むヒロミ
茶川は、淳之介のプレゼントをするので精一杯。ヒロミに指環をプレゼントしようとするのだが、原稿料の前借も断られ、ケースしか買えなかった。茶川はすまなさそうにヒロミにそのことを打ち明けるのだが、ヒロミは茶川の思いが嬉しく、その目に見えない指環をはめて欲しいと茶川に頼む。目に見えない指輪をつけたヒロミは灯りにかざし、嬉しそうに微笑む。
明くる日、ヒロミは借金を片付けるため茶川に何も告げず、店を閉め出て行ってしまう。
映画のラスト、夕日を眺めるヒロミの手には、からの宝石ケースが握られ、夕日に手をかざし微笑んでいる。
なんとも切ないが美しいシーンだろうか。

まだまだ、書ききれないが、宝石が詰まった宝石箱のような素敵な映画だった


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