2010年12月31日金曜日

もう少しで謹賀新年



あと少しで2011年の年明けである。
来年は「卯年」4番目の干支である。
写真は昔飼っていたうさぎたちだ。
ポコとモモ。
二匹がいなくなって久しい。

「卯」の形は、よく見ると両側に開く門の形に見える。
門を無理やり押し開けて中に入り込む様を表しているそうだ。
何もしないと門は開かない。
来年は、自分の力でがんばって門を押し開ける年にしたいものだ。

2010年10月24日日曜日

やさしい嘘と贈り物







やさしい嘘と贈り物

この映画は、ニック・ファクラーという24歳の若者が脚本・監督した心温まる作品だ。
この作品の脚本を書き上げたのが、17歳の時、名優マーティン・ランドーが惚れ込み、制作総指揮を買って出たそうだ。
主演は、『エド・ウッド』でアカデミー賞を受賞したマーティン・ランドー。
共演のエレン・バースティンも『アリスの恋』でアカデミー賞を受賞。
二人の名老優が、綴る物語は優しく悲しい。

ロバートは、スーパーで働く一人暮らしの老人。
クリスマスが近づいていたが、一人で過ごす寂しい日々を送っていた。
そんなある日、向かいに暮らすメアリーと知り合う。
メアリーは、以前からロバートのことを気にかけていたのだ。
メアリーの誘いでロバートは、彼女とディナーに出掛けるのであった。
他愛のない話に少年と少女のように時めく二人。
雪の舞う町をゆく聖歌隊を眺めながら、手を重ね合う。
その日から、町を二人で歩き、子供のようにそり遊びに興じ、楽しい時間を過ごすのであった。
やがて、クリスマスを迎え、ロバートは忘れていた日を思い出す。

ここからはネタバレなので、まだ見ていない人は、ご注意を。

楽しいクリスマスの夜をメアリーと共に過ごし、幸せな気持ちに包まれていた。
しかし、その翌朝、ロバートが目を覚ますと、メアリーの姿が隣になかった。
ロバートは、メアリーに置き去りにされたと思い込み、錯乱してしまうのであった。
幾度もつながらぬ電話をかけ、混乱していた。
その時、メアリーが帰ってきた。
ロバートはメアリーに毒づき、混乱は収まらず、メアリーの家に飛び込む。
そこでロバートは壁に飾られたロバートとメアリーやスーパーの上司マイクと笑顔で並ぶ写真を目にする。
ロバートは認知症でメアリーや息子のマイクのことを忘れていたのだ。
メアリーやマイクは、ロバートに気づかれない様に影から支えていたのであった。
一瞬、記憶を呼び起こしたが、次の瞬間、意識を失い倒れてしまった。
ロバートは病院に運ばれるが、残された時間はわずかだった。
枕元に寄り添うメアリー。
手を握りあう二人の姿がそこにあった。

認知症という題材を愛情深く繊細に紡いだ作品は、24歳の若者が撮ったとは思えない本当に素敵な作品だった。
忘れた過去は取り戻せない。
それを新しい思い出で埋めようとするメアリーの姿が切なく美しい。

少し早いがクリスマスの夜、愛する人とみてほしい作品だ。
悲しいが、心の芯が温かくなってくるだろう。
二人の老優の素晴らしい共演があって、24歳の若者の才能が開花した。
今後の作品に期待したい。

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2010年9月11日土曜日

不機嫌な赤いバラ


シャーリー・マクレーン、ニコラス・ケイジ主演のハートフルなコメディ作品。
1994年の作品だから、『月の輝く夜に』や『ワイルド・アット・ハート』で頭角を見せ始めた頃の作品だ。
この年には、ブリジット・フォンダと共演した『あなたに降る夢』も公開されており、この2作品でニコラス・ケイジの善良で誠実なキャラクターが、私の中で定着した。
この後、『ザ・ロック』、『コン・エアー』、『フェイス・オフ』と大規模なアクション映画に出演するが、悪役に回っても人の良さを感じてしまう。
その原型がこの『不機嫌な赤いバラ』で元大統領夫人を警護するシークレットサービスのエージェント役だ。
元大統領夫人には、『アパートの鍵貸します』から昨年公開された『ココ・シャネル』まで一線で活躍してきたシャーリー・マクレーンが演じていた。

大統領を亡くした未亡人は、寂しさからケイジ演ずるダグ護衛官に小言を言ったり、わがままのし放題。
早朝からゴルフに出掛けてみたり、急にオペラ鑑賞に行ったりと、ダグをはじめ護衛官達はいつも彼女に振り回されていた。
婦人のわがままにほとほとうんざりしていたダグは念願かなって人気を終え、ワシントンに戻ることになったが、それも束の間、婦人が大統領に電話を掛け、ダグは再び婦人の警護に付くのであった。
婦人はダグと衝突していたが、彼の誠実なところを気に入り、離れていくのが寂しかったのである。
そんなある日、ダグだけを護衛につけて湖畔に出掛けたとき、一瞬の隙をついて婦人が誘拐されてしまうのであった。

シャーリー・マクレーンは演技では出来ない彼女自身から感じるチャーミングさがある。
いくつになっても可愛いのだ。
わがままを言っても、へそを曲げても、憎めない愛くるしい表情がある。
それが、善人で生真面目なケイジと相まって、二人の間にじわじわと滲み出てくる心のつながりが素敵である。
この映画の原題は「Gurding Tess」と味気のないタイトルだが、邦題は凄く良いセンスのタイトルだ。
シャーリー・マクレーンは、まさしく不機嫌な赤いバラなのだ。
すごく大掛かりなサスペンスでもないし、大爆笑する映画ではないが、しみじみ伝わる暖かさが心地良い映画である。


2010年8月7日土曜日

デーブ



『ゴースト・バスターズ』のアイバン・ライトマン監督によるヒューマン・コメディ。
主演はケヴィン・クライン。

容姿が、ビル・ミッチェル大統領に瓜二つである理由で、人材派遣会社を営むデーブが大統領の替え玉に雇われる。
興味本位で気軽に替え玉を引き受けたことが切っ掛けで、デーブの運命が大きく変わってしまう。
デーブに代役を任せ、秘書とアバンチュールを楽しんでいた大統領は、突然脳卒中を患い、植物人間になってしまったのだ。
大統領特別補佐官のボブ・アレグザンダー(フランク・ランジェラ)は、ミッチェル大統領の後釜を狙う野心家でもあり、大統領の病状を偽って公表し、替え玉のデーブをしばらくの間代役に立てようとした。
報道官のアラン・リード(ケヴィン・ダン)と共にナンス副大統領(ベン・キングスレー)は精神的な問題があると偽りの説明をし、国家の危機を救うという名目でデーブを説得した。
ミッチェル大統領との夫婦仲が冷め切っていたファーストレディであるエレン(シガニー・ウィーバー)をも騙し、デーブは見事に大統領として行動するのであった。
ある日、大統領はエレン婦人が力を入れているホームレスの保護施設の視察をすることになった。
ホームレス施設には多くの子供たちが暮らし、その事実にデーブも驚くのであった。
デーブはみんなから離れて一人で遊ぶ少年に声をかけた。
手品を見せ、少年の心を開こうと語りかける姿を見て、驚きながらも喜ぶエレン婦人の姿があった。
しかし、アレグザンダー補佐官の手により、ホームレス保護の法案は、大統領の拒否権で却下され、夫への失望にエレンは怒った。
事実を知り、デーブはアレグザンダー補佐官に抗議をしたが、悔しければ6億5千万ドルを捻り出してみろと言い放たれてしまうのであった。
デーブはどうにかしようと、親友の会計士マーリー(チャールズ・クローディン)をホワイトハウスに呼び出した。
デーブは、マーリーにどうにか6億5千万ドルを捻出できないかと懇願した。
最初は事の大きさに驚いたマーリーであったが、デーブの頼みを聞き入れ穴だらけの予算案の見直しをするのであった。
第100回目の記念する閣議には大勢のカメラも集まり、閣僚達が顔を揃えていた。
デーブは、閣議の冒頭で予定になかった予算の見直しを議題に上げた。
事情を知らなかったアレクザンダーはどうにか食い止めようとするが、後の祭り。
デーブは、様々な無駄を指摘し、最後には6億5千万ドルの捻出に成功するのであった。
デーブの見事な手際に閣僚や記者達も暖かな拍手を送った。
そのニュースを知ったエレンは、大統領が別人でないかと疑い、替え玉であることを見抜いてしまった。
大統領が危篤状態である事を知り、一度はホワイトハウスを出て行く決意をし、デーブと外に出たのであったが、デーブの人柄を知り人のために役立つことができる希望を持ち、二人でホワイトハウスに戻った。
デーブは、不正を推し進めるアレグザンダー補佐官を解雇した。
アレグザンダー補佐官の策略でナンス副大統領は不正の疑惑に掛けられていたが、デーブをも失脚させるため、大統領が過去に犯した不正も暴露してしまった。
大統領の不正は事実であり、デーブは誠実な副大統領の潔白を証明するため、シークレットサービスのデュエーン・スティーヴンソン(ヴィング・レイムズ)やリード報道官とある行動に出るのであった...

この映画、大好きな映画である。
何度見ても楽しいし、すかっとした気分になる。
主役のケヴィン・クラインをはじめ配役が素晴らしい。
芯の強い女性を演じたらピカイチのシガニー・ウィーバー。
重みのある悪役は、『フロスト×ニクソン』でニクソン大統領を演じたフランク・ランジェラ。
人の良い親友マーリーにはチャールズ・クローディン。
誠実な副大統領は演技派のベン・キングスレー。
無口だが人間味のあるシークレットサービスのスティーヴンソンは、ヴィング・レイムズ。
デーブの行動を見て改心する報道官には、ケヴィン・ダン。
芸達者な役者たちを役柄にマッチして配役しているのが素晴らしい。
人間味とユーモアにあふれた素敵なコメディである。

まだ観ていない人にはお薦めの1本だ。

2010年8月6日金曜日

アンダーワールド



ケイト・ベッキンセール主演。
近頃は吸血鬼が登場する作品は単純にホラーにカテゴライズ出来ない。
本作は、MTV界の鬼才、レン・ワイズマンによる初監督作品で、ゴシック・サイバー・アクションと言うようだ。
さすがにMTV出身だけあって、ヴィジュアルな映像は洗練されている。
そして、何と言ってもボンテージ・スーツに身を包んだケイト・ベッキンセールがクールだ。
セレンディピティ以来、彼女のファンである。
また、吸血鬼の長老ビクターを演ずるビル・ナイも大好きな役者さんだ。
『スティル・クレイジー』の夢を諦められない初老のロッカーをはじめ個性的で魅力ある役を数多くこなしている。
本作での長老役も存在感抜群である。

この作品は、何百年にもわたるヴァンパイアと狼男=ライカンの闘いを描いている。
ケイト・ベッキンセールは、ライカンを狩る戦士セリーン。
夜の街、高い塔の上から黒いレザーコートをはためかせ、ライカンの動きに目を光らせるシーンが超クールだ。
ポスターにも使われているシーンでもある。
青白い肌に青い瞳。
漆黒のスーツに身を包むベッキンセールはまさに孤高の戦士にふさわしい。

ライカンの首領であるルシアンは宿敵であるヴァンパイア族を倒すため、特殊な遺伝子を持つ人間を探していた。
それが、青年医師マイケルであった。
マイケルを追うライカン。
それを阻止するセリーン率いるハンター。
ヴァンパイア族内部の裏切りを知り、セリーンは掟破りを承知の上で、まだ目覚めの時期に来ていない長老ビクターを目覚めさせる。
そして、ライカンとヴァンパイアの雌雄を決する闘いが始まるのであった。

この作品の成功により、続編である『アンダーワールド・エボリューション』とライカンとヴァンパイアの対立の始まりを描いた『アンダーワールド・ビギンズ』が制作された。
ビギンズでは、残念ながらベッキンセールはキャスティングされていないが、彼女の見た目や雰囲気がよく似ている『ドゥームズ・デイ』のローナ・ミトラが出演している。

MTV出身のヴィジュアルの拘りだけでなく、ストーリー展開やアクションの秀逸さ、ビル・ナイをキャスティングするセンスの良さもあり、見応えのあるクールな作品だった。
でも、やっぱりベッキンセールの魅力に尽きるなあ。



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2010年8月4日水曜日

9時から5時まで



3人のOL ジェーン・フォンダ、リリー・トムリン、ドリー・パートン主演のコメディ。
彼女達は立場が違うが、同じ職場のセクハラ・パワハラ上司に悩まされていた。
ジュディ(ジェーン・フォンダ)は、離婚を切っ掛けに就職したばかり。
要領がつかめない彼女はミスをしては上司のフランク・ハート・ジュニア(ダブニー・コールマン)に無能呼ばわりされていた。
フランクは副社長であるが、古株のベテランOLバイオレット(リリー・トムリン)の有能さに助けられて出世したのであった。
しかし、彼女は昇格も何もなく、正当に評価されない事を不満に思っていた。
秘書ドラリー(ドリー・パートン)は、フランクに気に入られていたが、既婚者の彼女は度重なるセクハラに嫌気がさしていた。
そんな彼女達が、偶然酒場で顔を合わせた。
日頃の鬱憤をぶちまけ合い、すっかり意気投合してしまった。
彼女達は、自分がもしフランクを始末するならどんな方法をとるか 話し合うのであった。
この空想シーンがなかなか面白い。
西部のガンマンになって撃ち殺したり、童話のお姫様になって毒殺したりと、それぞれの空想を映像にしていた。
リリー・トムリンのお姫様がアニメのウサギや森の動物と話すシーンまで撮っていて、なかなか面白かった。
その翌日、フランクに出したコーヒーに誤って猫いらずを入れてしまい、偶然にも椅子から転げ落ちて気を失ったフランクが病院に運ばれて行ったことから、3人は慌てるのであった。
てっきり毒殺してしまったと思い込んだ彼女達は、病院に行って他人の死体を持ち出してんやわんやの大騒動。
結局は次の日にフランクが会社に現れ、自分達の勘違いと分かりほっと一安心したのも束の間、フランクに彼女達の話が密告されてしまうのであった。
事実を知ったフランクは、彼女達を脅迫したが、逆に彼女達に縛られ自宅監禁されてしまった。
フランクが不在の間に彼女達は、働く女性のための託児設備を設けたり、多くの改善を行った。
結果として、20%もの効率アップを成し遂げてしまった。
しかし、いつまでもフランクを監禁しておく訳にもいかず、2週間後にフランクを解放した。
彼女達の努力もこれまでと思っていたが、奇跡が起こった。
滅多に姿を現さない会長が効率化に成功したと思っていたフランクに会いに来たのだ。
フランクは事情を察し、自分の功績であるかの如く会長と話した。
会長はブラジルの僻地で始める新事業にフランクを抜擢したのであった。
思いもよらない展開でフランクはブラジルへ行く羽目になり、彼女達は嬉々として喜んだ。

と、こんな感じのコメディだが、テンポも良く明るい3人のキャラクターも立っていて、なかなか楽しい作品だった。
リリー・トムリンのクールな感じやドリー・パートンのお色気むんむんの可愛いキャラクターにジェーン・フォンダの少しとぼけた雰囲気が良い感じに相まっていた。
因みにドリー・パートンの映画出演はこの作品が始めて。
映画向きの良いキャラクターだ。
最後に登場する会長はスターリング・ヘイドンだが、グレゴリー・ペックやチャールトン・ヘストンの名前も上がっていたそうだ。

ジェーン・フォンダは、シリアスな作品から若い頃のエロチックな作品にコメディと様々な作品に出演し、それぞれのジャンルで魅力を放っている。
西部を舞台にし、リー・マービンと共演した『キャット・バルー』もなかなか面白かった。
コメディエンヌとしても才能ある女優さんだ。

9to5 9時から5時までは、気軽に楽しめるおすすめの作品である。

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2010年7月30日金曜日

ケース39



今日のブログは最近のホラーのネタばれが多いかも知れないので足からず。

主演レニー・ゼルウィガーのホラー映画である。
ケース39とは、児童福祉で担当した39番の事例のことだ。
39番は、少女リリー(ジョデル・フェルランド)が両親から児童虐待を受けている疑いがあり、保護すべきかどうか調査する必要があった。
ソーシャルワーカーのエミリー(レニー・ゼルウィガー)が家を訪ねると両親達の異常な行動から虐待があると確信する。
ある晩、リリーから助けを求める電話が掛かり、知り合いの刑事とリリーの家へ向かった。
リリーの大きな悲鳴を聞きつけ、家に踏み込んだ。
リリーは両親にオーブンに閉じ込められ焼かれようとしていた。
間一髪、リリーは救い出され、両親は逮捕され、裁判所の判断で精神科に収容されることになった。
リリーには新たな里親を探すことになったが、リリーの希望もあり、エミリーも見過ごすことができず、審問を受けて里親が決まるまで一緒に暮らすこととなる。
その日を境に周囲で悲惨な事件が次々と起こるのであった。
内気でおとなしい少年が両親を惨殺したり、同僚が謎の死を遂げる。
さて、エミリーに何が起ころうとしているのか...

と、どっかで聴いたような話ではなかろうか。
そうである最近の作品の中では良くできたホラー『エスター』とシチュエーションが似ている。
あっちは孤児院、こちらは児童虐待と違うが、少女が新しい里親を探すことから悲劇が始まるところは同じだ。
少女も色白で黒髪の少女。
徐々に本性を現すあたりの恐ろしさもよく似ている。
で、どっちが怖いかと言えば前半は同点で後半はエスターが少しポイントリードというところかな。
レニー・ゼルウィガーの貫禄がある分で補ってはいるが、総合得点は僅差で『エスター』の勝ちだろうか。

最近、DVDで観たホラーでは、この2作品と『スペル』の3作品だが、『スペル』が怖いのは前半だけで、主人公の女性の身勝手さに同情できないところもあって、後半は自業自得と思ってしまった。
前半がぞっとする怖さがある分、後半の残念な展開が勿体ない気がする。

ホラーは大好きだが、面白いか面白くないかの別れ目は1点だと思う。
恐怖の正体が分からないからこそ、不気味で不安になるのであって、正体の詳しい説明は不要である。
もし種明かしするとしても、映画の最後の最後に納得する内容をポンと見せてほしいものだ。
得体が分からなければ、続編も作れるし、分かりやすい説明は不要だと思う。
観ている側は、正体を知りたいから食い入るように観るが、教えちゃうと興醒めになる。
頭の中で膨らむ恐怖が一番怖いのだ。

例えば『REC』だが、断片的な情報だけで、理路整然とした原因の説明はない。
『リング』もやはりそうである。
『呪怨』なんて全く意味不明だ。
何か分からないが、恐怖は連鎖し、終わっていないことだけが伝わってくるとぞぞっとする。
『REC:2』は、そういう意味では謎解きし過ぎて白けてしまった。
意味の分からぬ恐怖がどこかにいってしまった。

『ブレアウイッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』は典型的な意味不明の恐怖だから成功したのだろう。
個人的にはやり過ぎで疲れる映画で、好みじゃないが狙いは正しいだろう。

そういう目で観ると、最近のホラーの個人的な採点はこんな感じだ。

スペル 60点
エスター 75点
ケース39 70点
REC 80点
REC:2 65点
パラノーマル・アクティビティ 70点

この中では、やはり『REC』、『エスター』が怖かったかな。

同じホラーでも馬鹿馬鹿しくって面白いのは、『ファイナル・デッド・サーキット』や『処刑山』だ。
ちょっとグロいところはきついが、アトラクション感覚で楽しむ映画だ。

という訳で、『ケース39』は劇場公開しなかったそうだが、それなりには面白かった。


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2010年7月28日水曜日

ビッグ・ウエンズデー



ジャン・マイケル・ヴィンセント、ウィリアム・カット、ゲーリー・ビジー。

1960年代のはじめ。
アメリカ、カリフォルニア。
マット、ジャック、リロイの3人のサーファーがいた。
彼らは波に乗り、馬鹿騒ぎをし、青春を謳歌していた。
彼らの夢はビッグ・ウェンズデーの大波に乗ることであった。
ビッグ・ウェンズデーとは、伝説の大波であり、その大波は水曜日に現れるとサーファー達は信じていた。
彼らは、ベアー(サム・メルヴィル)という伝説のサーファーを慕っていた。
ベアーは桟橋の小屋に住み、サーフボードを作り、伝説の大波を待っていた。

時の移り変わりの中で、ベトナム戦争の徴兵で仲間を失ったり、結婚して家族を持ち、様々なことに翻弄されながらも、マットは伝説の大波を待ち続けていた。
ジャックやリロイとも顔を合わすことも途絶えていたある日、伝説の大波が訪れるのであった。
ビーチに向かうマットの前にロングボードを手にしたジャックとリロイの姿があった。

1978年のジョン・ミリアス監督による青春映画。
ミリアス監督は、『ダーティー・ハリー』や『地獄の黙示録』の脚本家として知られており、『風とライオン』や『コナン・ザ・グレート』も彼が監督した作品である。
映画自体はフィクションであるが、映画に登場するエピソードの多くは実際のサーファー達の体験を元にしている。
サーフィン・シーンの映像も迫力があり、壮大な青春映画として作られている。
伝説のサーファーであるジェリー・ロペスも本人役で出演している。

マット達が勝手に人を呼んでジャックの家で乱痴気騒ぎをしたり、二日酔いのマットを海に連れて行って酔い覚ましに波に乗せるエピソードが楽しかった。
徴兵から逃れるため、仲間達とわざと検査に不合格になるよう、ゲイを装ったり精神病のふりをしたが、一部の仲間はベトナムに送られ帰って来れなかった。
検査でのあの手この手が可笑しかったが、帰って来れなかった仲間の墓の前で酒を酌み交わす3人の姿が悲しかった。

この映画の魅力は主役の3人の魅力に負うところが大きい。
ジャン・マイケル・ヴィンセントは数多くの映画に出演したが、爽やかなキャラクターを生かせる作品よりも『魔鬼雨』などのB級作品に出演する方が多く、本作でやっと彼の鍛えられた肉体と人好きのするキャラクターを生かせる作品に巡り会えた。
この映画以降にも多くの作品に出演したが、本作以上の作品には出演していない。
テレビ・シリーズでは、1986年に公開されたエア・ウルフが大ヒットし、日本でも人気を博した。

ゲーリー・ビジーは、この後も多くの作品にバイプレイヤーとして出演している。
タフな悪役として出演することが多いが、存在感のある役者として活躍している。
一時期はコカイン中毒で命を落としかけるまでに至ったそうだが、今は麻薬を克服している。

ウィリアム・カットもやはり多くの作品に出演したが、大作には巡り会えなかった。
スターウォーズのオーディションにも挑み、ルーク・スカイウォーカー役のフィルム・テストも行ったが、スカイウォーカー役にはマーク・ハミルが選ばれた。
その後、カットもテレビ・シリーズ『アメリカン・ヒーロー』に出演し、人気シリーズとなった。
その後は、テレビ作品や声優などで活躍し、HEROS3でもレポーター役で出演している。

3人とも本作以降に様々なことがあったが、彼らにとっても本作はビッグ・ウェンズデーだったようだ。

スラップ・ショット



『明日に向かって撃て』のジョージ・ロイ・ヒル監督とポール・ニューマンが作った愛すべきスポーツコメディ。

アメリカのプロ・アイスホッケーチームであるチャールズタウン・チーフスのコーチ兼プレイヤーのレイジーことポール・ニューマンが、低迷するチームを立ち直らせ、翌年に向けてあの手この手と奔走する。
オーソドックスな戦いを続けていたチーフスは、チームがスカウトしたハンセン3兄弟と契約し、彼らをゲームに出したことで一変する。
ハンセン兄弟は、皆 長身・長髪でど近眼。
遠征でも常におもちゃを持って行き、ホテルの部屋でレーシングカーで遊ぶという変わり者。
レイジーは、このいかれた兄弟をお荷物と思っていた。
しかし、ある試合で主力選手の多くが負傷し、彼ら3人が出場する。
黒縁の眼鏡をかけたハンセン3兄弟は、ゲームに出場するなり相手選手を弾き飛ばし、挟み込んだりと目のさめるようなラフプレイで大暴れ。
チームの低迷にストレスで鬱憤の溜まっていた観客も大喜び。
殴る蹴るの派手なプレイで途中退場になってしまうが、チームは勝利を手にし、ファンの大きな声援を得た。
チームのスタイルは一変し、ラフプレイで連勝し、ハンセン兄弟をはじめ大きな人気を得る。
ある試合で観客から投げられたチェーンがハンセン兄弟の一人の眼鏡に当たり、観客席に乱入して大暴れになった。
ハンセン兄弟は、その暴行で留置所に入れられることになったが、さらにチームの人気を高める結果となった。
レイジー自らが、ラジオ放送で相手チームの中心選手を潰したメンバーに100ドルの賞金を渡すと言ったり、もうはちゃめちゃ。
連勝を続け、いよいよ優勝目前に迫るチーフス。
さて、彼らに明るいオフは訪れるのか...

と、下品な言葉もバンバン言うは、格闘技並みのラフプレイは飛び出すはと、やんちゃな男たちが暴れまわる爽快なコメディだ。
離婚を迫られる妻や女性が絡むエピソードも盛り込まれているが、追い詰められた男たちの真剣さをリアルにするためのおまけのような物。
見所は、はちゃめちゃな男たちがリンクで暴れまわるシーンだ。

この映画の出演者はポール・ニューマンをはじめ役者達だが、リアルなゲーム・シーンを撮るため多くのプロ・プレイヤーが登場している。
ハンセン3兄弟も現役のプレイヤーがオフを利用して出演した。
彼らはインタビューで語っていたが、いつも通りの雰囲気で暴れ回ってくれれば良いと監督から言われていたそうだ。
リアルなシーンを撮るために苦労していたのは、プロ・プレイヤーではなく役者達だったようだ。
ハンセン兄弟の3人ともが口を揃えて言っていたのは、ポール・ニューマンのスケーティングが上手いということだ。
さすが、ポール・ニューマン。
並みのスターとは少し違う。

ジョージ・ロイ・ヒルはポール・ニューマンとロバート・レッドフォードと映画を多く撮った。
『スティング』、『明日に向かって撃て』では2人と、本作ではポール・ニューマンと、『華麗なるヒコーキ野郎』ではロバート・レッドフォードと作品を作っている。
いずれも、少し馬鹿馬鹿しいが愛すべき男たちを描いた作品だ。

この映画は本当におすすめだが、やはりハンセン兄弟の大暴れが一番面白い。
ラストのシーンも馬鹿馬鹿しくって、適当と言えば適当なんだが、良い余韻が残る楽しい映画だ。
因みにハンセン兄弟役の3人はこの映画の影響もあって人気を博し、多くのチャリティー・イベントでも活躍しているそうだ。


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2010年7月12日月曜日

アート

スターのポートレートをiPhoneのappでレタッチしてみた。

スティーブ・マックイーン


グレース・ケリー


ポール・ニューマン


オードリー・ヘップバーン


ハリソン・フォード


ドミニク・サンダ


ショーン・コネリー


アヌーク・エイメ


ヘンリー・フォンダ



ジャクリーン・ビセット


アラン・ドロン


ブリジット・バルドー

2010年7月1日木曜日

キャノンボール


ロサンゼルスからニューヨークまでの5000キロをルール無用で車で走り切る。
獲るのは名誉だけ。
このレースに出場するスター達が凄い顔ぶれだ。
バート・レイノルズ、ディーン・マーチン、サミー・デイビスJr.、ジャッキー・チェン、ロジャー・ムーア、ファラ・フォーセット・メジャーズと錚々たる面々が顔を揃えている。
ロジャー・ムーアは007気取りでアストンマーチンに乗ってレースに参加する英国紳士で登場する。
自分で自分をパロディで演じるのが面白い。
サインまでロジャー・ムーアと書く始末。
ディーン・マーチンとサミー・デイビスJr.は、牧師に扮装し、警察の目から逃れようとする。
ジャッキーは日本人として三菱の車で参戦。
カメオ出演でイージーライダーのピーター・フォンダまで登場する。
話の筋がどうのこうのは関係ない お祭り騒ぎ的な作品である。
制作は、香港のゴールデンハーベストと20世紀フォックスの共同制作だ。
この映画はヒットし、ジャッキーやバート・レイノルズ、サミー・デイビスJr.、ディーン・マーチンなど主なメンバーはそのままで、スーザン・アントン、テリー・サバラス、007のジョーズことリチャード・キールが出演したパート2が作られた。



古くは、グレート・レースや素晴らしきヒコーキ野郎などの映画にあったレースを舞台にした華やかなオールスターによるコメディの雰囲気を持った楽しい映画だ。
最近は、こういう馬鹿馬鹿しい楽しい映画は見かけなくなってしまった。
馬鹿馬鹿しい話をオールスターで制作し、何も考えずに楽しめる作品が少なくなったのはさみしい限りだ。

2010年6月30日水曜日

マイ・ウェイ



ワールドカップを観戦して、1本の映画を思い出した。
南アフリカと英国で共同制作された『マイ・ウェイ』である。
アパルトヘイトがまだ存在していた1970年代の作品だ。
大きな建設会社の社長で元オリンピックの金メダリストである主人公は、家族にも恵まれ幸せに暮らしていた。
頑固一徹で自分の思うがままに生きてきた。
息子たちにも自分の思い描く道を歩ませようとするが、思い通りにはいかず、片腕となっていた息子も事故で失ってしまう。
自分の信念を確認し、証明するためにマラソン大会に出場する。
金メダルを獲ったのは、大昔の若かりし頃。
今や中年から初老にさしかかろうとしていた。
周囲から無謀と言われながらも、マラソンに挑む主人公。
ぼろぼろになりながらゴールに近づくと彼の愛する家族たちの笑顔がそこにあった。
主人公はスチュアード・ジョンソンという役者さん。
いかにも頑固親父といった風貌の役者さんだった。
映画のクライマックスでは、タイトルどおりフランク・シナトラのマイ・ウェイが流れ、映画を盛り上げていた。
マイ・ウェイは、ポール・アンカが、シナトラが引退するという噂を聞きつけ、シナトラのために自身が作曲したシャンソンに英語の歌詞を付けアレンジした曲だ。
シナトラが歌うマイ・ウェイは大ヒットし、シナトラの代名詞にもなった曲だ。
映画は、このマイ・ウェイの長大なPVのような作品である。
映画はヒットし、この映画のその後を描いた続編も作られた。
人種差別の大きな問題をかかえていたとは思えない善良な人達を描いていた。

アパルトヘイトが撤廃され、ネルソン・マンデラのもと、変革が進められている。
復讐ではなく、お互いを認め合うことからスタートし、良い方向に向かってはいるが、格差が生む治安の問題など南アフリカはまだまだ多くの問題をかかえている。
何でワールドカップが南アなの?
という疑問はあったが、南アフリカが真に一つの国としてまとまって行くには大きな意義があったのだろう。
映画とは違うが信念を持って進んでいって欲しいものだ。

2010年6月29日火曜日

ゴールディ・ホーン

バタフライはフリー


女優さんで好きな女優さんは数々あれど、キャラクターの可愛さでは、ゴールディ・ホーンが一番だ。
小さな顔にびっくりした様な大きな瞳。
明るく天真爛漫。
悪気はないけど、人を災難に巻き込んだり、巻き込まれたりする。
小悪魔的な雰囲気もあり、チャーミング。
誰もが認めるコメディエンヌ。
それが、ゴールディ・ホーンである。

バンク・ジャック


芸歴は長く、24歳の頃に主演したサボテンの花が1969年なので、今から40年前だ。
永遠に美しくが、50歳の手前だと考えると、いつ歳をとっているのか分からないほどだ。
彼女の魅力は、その存在感。
彼女が出ているだけで、楽しい気分になってしまう。

アメリカ万才


そんな彼女も今や64歳。
現在のパートナーは、俳優のカート・ラッセル。
前夫との娘ケイト・ハドソンも女優で活躍している。

プライベート・ベンジャミン

ワイルド・キャッツ


彼女の主な出演作は以下のとおり。

サボテンの花 Cactus Flower (1969)
バタフライはフリー Butterflies Are Free (1972)
続・激突!/カージャック The Sugarland Express (1974)
シャンプー Shampoo (1975)
ファール・プレイ Foul play (1978)
昔みたい Seems Like Old Times (1980)
プライベート・ベンジャミン Private Benjamin (1980)
結婚しない族 Best Friends (1982)
スイング・シフト Swing Shift (1984)
アメリカ万歳 Protocol (1984)
ワイルドキャッツ Wildcats (1986)
潮風のいたずら Overboard (1987)
マイ・ブルー・ヘブン My Blue Heaven (1990)
バード・オン・ワイヤー Bird on a Wire (1990)
幸せの向う側 Decieved (1991)
ハウスシッター/結婚願望 Housesitter (1992)
永遠に美しく… Death Becomes Her (1992)
ファースト・ワイフ・クラブ The First Wives Club (1996)
世界中がアイ・ラヴ・ユー Everyone Says I Love You (1996)
アウト・オブ・タウナーズ The Out-Of-Towners (1999)
フォルテ Town & Country (2001)
バンガー・シスターズ The Banger Sisters (2002)



うーん、すごいものだ。



アイスキャッスル


ロビー・ベンソンという名前を聞くと、70年代のアメリカの青春映画を思い出す。
ジェレミー、ビリー・ジョー 愛のかけ橋、ワン・オン・ワン、そしてこのアイス・キャッスルである。
この映画は、オリンピック出場を目指すリン=ホリー・ジョンソンと彼女を支えるホッケー選手のロビー・ベンソンや家族のお話だ。
練習中の事故で頭を打ち、視力を失ったことを隠したまま、ロビー・ベンソンの励ましで冬季オリンピックへの出場をかけて大会に出場する。
リン=ホリー・ジョンソンは、当時のアメリカのフィギュア界で人気のあった選手であり、私のようなおっさん世代から見ると札幌オリンピックのジャネット・リンを思い出させる氷上の妖精に相応しいチャーミングな女性だ。
ロビー・ベンソンは、取り分けての二枚目でもなければ、長身でもない。
隣に住んでるおにいちゃんといった感じで、いたって普通の青年である。
だからこそ、親近感もあったのだろう。
この映画以降も何本か出演しているが、青春映画以外の彼の記憶はない。

その後の彼は、数多くのテレビドラマの監督をしたり、演技の指導をしているそうだ。
特筆すべきは、あのディズニーの美女と野獣の吹き替えを務めたことだ。
この作品で野獣を演じた彼は高い歌唱力も評価され、吹き替えでも活躍したそうだ。

彼の主な出演作は、こんなところだ。

1991年美女と野獣
1987年レンタ・コップ
1983年ロンリーウェイ
1980年マイ・ハート マイ・ラブ
1978年アイス・キャッスル
1977年ワン・オン・ワン 脚本/出演
1976年ビリー・ジョー 愛のかけ橋
1975年ラッキー・レディ
1973年ジェレミー

数多くはないが、青春時代を思い出すと彼の映画も思い出す。

2010年6月28日月曜日

ベンジー


ウェスタンシンガーのチャーリー・リッチが歌うI Feel Loveの曲が流れ廃屋の屋根から一匹の犬が姿を現す。
1974年の興行収入で、ジョーズ、タワーリングインフェルノに次ぐ第3位の成績を上げたベンジーである。
このベンジーは、調教師のジョー・キャンプが監督したファミリー向け作品であり、凄いモンスターも出てこなければ、ビッグスターが主演している訳でもない。
ベンジーを可愛がる男の子と男の子の妹が誘拐され、ベンジーの活躍で無事救出されるといった内容であり、派手なアクションもない。
ベンジーの愛嬌たっぷりの名演に眉尻を下げながら、ほのぼのした気持ちで観れる作品だ。
本作のヒットで何本か続編が制作されたが、本作以上のヒットには至らなかった。
日本でも大ヒットし、テレビの特番のためにジョー・キャンプとベンジーが来日したほどだ。
番組には、淀川長治さんも来られ、ジョー・キャンプと対談していた。
ベンジーは、ラッシーやリン・ティン・ティンに肩を並べる犬の世界のビッグスターだが、雑種の野良犬であり、ジョー・キャンプが施設から引き取った犬だとか。
※訂正:ベンジーを引き取って世話をし、育てたのはトレイナーのフランク・インさん。Higinsと名付けられ、インさんが亡くなったときには、墓に遺灰を一緒に納めたそうだ。

お金さえかければ大ヒットする訳ではない良い例で、低予算でも観客が観たい物を作れば、人は観にくるものである。
因みに動物好きの私も中学の頃に映画を観に行ったが、単純なストーリーである分だけ、ジョー・キャンプの素晴らしい調教によるベンジーの名演技に感心し、堪能した。
毎朝、街を歩き回り街の人達に愛嬌を振りまくベンジーが良い感じなのだ。



ファイヤーフォックス


クリント・イーストウッドが制作・監督・主演したスパイアクション作品。
米ソ冷戦時代の後半。
ソビエトに潜入し、極秘裏に開発されていた超音速のジェット戦闘機を奪取するため1人のパイロットが選ばれる。
クリント・イーストウッド演じるガントは戦争で精神的な問題から一線から退いていたが、ロシア語に流暢なことや卓越した操縦技術から作戦を命じられる。
盗み出す最新鋭戦闘機は、頭で思考することで攻撃可能だが、ロシア語で思考しなければならないところが面白い。
マッハ5で空を飛び、ステルス機能を備えた戦闘機で、ソビエトに制空権を握られる訳にはいかないアメリカが極秘裏に進めた作戦である。

原作のモデルは1976年にMIG25で北海道に降り立ちアメリカに亡命したベレンコ中尉の事件とのことだ。
映画は2時間を超える長尺で、アクション映画としてはかなり長い作品だ。
映画の前半はソビエトに潜入し、ファイヤーフォックスがある基地までたどり着くまでのサスペンス。
後半は、ファイヤーフォックスを奪ってからソビエトのエースパイロットと対決するまでのアクション映画である。
このため、前半は暗く陰鬱であり、後半は派手なアクション映画になっている。
イーストウッドらしい作品にも思えるが、少し長すぎる。
とは言え、それなりに楽しめる作品には仕上がっている。

シチュエーションを変えてリメイクできそうな作品だが、潜入する敵地が思い浮かばない。
北朝鮮に行っても盗む物もないし、中国ならコピーの戦闘機だろう。
今更、ロシアもリアリティがない。
やっぱり、冷戦時代だからこそ東側の国への潜入が緊迫感を持てるのだろう。

2010年6月27日日曜日

ダブ


ジョセフ・ボトムズ主演の青春映画だ。
最年少で単独ヨット航海により世界一周を成し遂げた青年のお話だ。
彼の彼女役にはデボラ・ラフィン。
制作のグレゴリー・ペックが、その清楚な魅力に惚れ込んでキャスティングしたそうだ。
海にヨットにHangTenのシャツ。
綺麗で清楚な彼女。
荒れ狂う大海原で一人で格闘する青年。
典型的な青春映画が良い感じだ。
ジョン・バリー作曲の主題歌Sail The Summer Windsがまた爽やかな良い曲だ。
こういうタイプの映画はもう流行らない時代になったんだろうか。
この映画やロビー・ベンソンが主演した青春映画の数々が懐かしく感じる。
悲しいかなこの映画もまたDVD化されていない。


ガール・ファイト


ミシェル・ロドリゲスがデビューしたのが、プロの女性ボクサーを迫力満点で演じたこのガール・ファイトだ。
プエルトリコとドミニカの両親の間で生まれた。
エキゾチックでワイルドな鋭い眼光が印象的だ。
S.W.A.T.、バイオハザードなどのヒット作やテレビシリーズLOSTに出演し、存在感を見せていたが、飲酒運転で刑務所に収監されたり、暴力事件を起こしたり、私生活でもワイルドで知られている。
そんな彼女だが、アバターにもキャスティングされ、反抗する女兵士を演じ、ただのじゃじゃ馬じゃないことを証明している。
このガール・ファイトで見せるボクシングへの情熱も彼女でしか感じることができない迫力がある。
出ているだけで迫力を感じる女優である。
今後も私生活ではなく、スクリーンで暴れまわる彼女を観たいものだ。


2010年6月26日土曜日

パリのめぐり逢い


監督クロード・ルルーシュ、音楽フランシス・レイ
イブ・モンタン、アニー・ジラルド、キャンディス・バーゲン主演のフランス映画
長年連れ添った妻と若く知的な魅力に溢れる女性の間で心が揺れ動く中年男イブ・モンタン。
渋くてしっとりした大人のラブロマンス。
男と女に匹敵する秀作にも拘らず、ビデオ化もDVD化もされていない。
モンタンの浮気に気づき、さみし気な表情を浮かべるアニー・ジラルドがなんとも切ない。
映画に漂う空気というか、青みがかった映像から感じる雰囲気がたまらない。
これがルルーシュのフランス映画という感じだ。


2010年5月17日月曜日

96時間







最近、レンタルして面白かった映画と言えば、アバターを除くと『96時間』である。
主演は、『シンドラーのリスト』や『スターウォーズ・エピソード1』のリーアム・ニーソン。リュック・ベッソン制作のサスペンス・アクションだ。

元CIAの工作員だったブライアン・ミルズは、引退して妻とも離婚し、カリフォルニアで一人暮らしていた。
彼の唯一の生きがいは娘のキム(マギー・グレイス)。
裕福な再婚相手の家庭で暮らすキムと離ればなれにはなったが、いつも娘のことを気に掛けていた。
そんなある日、17歳になったキムは友達のアマンダとヨーロッパ旅行に行きたいとブライアンに同意書のサインを懇願した。
ブライアンは最初は、危険を心配してサインを拒んだが、娘の根気に負けて、あれやこれや条件付きでサインをした。
携帯で必ず居場所を知らせることなどを条件に、キムはパリに旅立った。
しかし、ブライアンが恐れていたことが現実になってしまうのであった。
キムとアマンダが空港で知りあった若者とタクシーを相乗りしたことで、アルバニア系の人身売買組織に誘拐されてしまった。
誘拐される直前に電話でキムと話したブライアンは、最後の電話を手掛かりに娘の救出に向かった。
救出までの猶予は96時間。
それを過ぎると売買は成立し、キムを探し出すことは困難になる。
CIA時代のコネクションを使いありとあらゆる手段を使い、組織に近付いて行く。
果たして、キムは無事救出されるのだろうか、...

この映画、何が良いかというとリーアム・ニーソンにつきる。
リチャード・ギアみたいに軽くもないし、トミー・リー・ジョーンズほど重くもない。
派手ではないが、存在感があるリーアム・ニーソンにうってつけなのだ。
シンドラーのリストで見せた人間臭さのある人物やスターウォーズのジェダイ・マスターの威厳など、多様な人物を演じるが冷静で芯を持った人物にピッタリなのだ。
この映画では、娘の救出のためにはマフィアであろうが、フランスの機関の元友人であっても容赦せず追い込んで行く。
その姿勢は徹底していて、物語はスピーディに展開していく。
手掛かりをつかみ、徐々にキムに近付いていく緊迫感に引き込まれていく。
少し前に『トランスポーター3』を観たが、はっきり言ってこちらの方が断然面白かった。

フランス映画には良い映画が沢山あるが、どちらかと言えば、この手のアクション映画は暗めに深刻な物が多く、爽快感という点から見ると、あまり良い作品は少なかった気がする。
良い意味で、ハリウッド的なスピーディな娯楽性があって良くできた作品に仕上っていた。
この作品の評判が良かったので、続編が作られるのも決定しているそうだ。
因みに、元妻役にはファムケ・ヤンセンが配役されていた。
彼女は『007ゴールデンアイ』で、ピアーズ・ブロスナンを痛めつける悪につくボンドガールで登場した女優さんだ。
この映画ではマフィアが拐った女性を麻薬漬けにして従わせるシーンが出てくるが、ヤンセンは実生活において、国連活動で麻薬撲滅のために闘っているそうだ。

あの手この手で様々な映画を世に送り出すリュック・ベッソンの勢いは、まだまおさまりそうにない。

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2010年4月28日水曜日

アバター




映画館で観たかったが、観れなかった『アバター』をDVDで観た。
まだ公開している映画館もあるそうなので、早いDVD化のような気もするが、考えればヒットした作品なのでロングラン上映ならば、そうでもないのかもしれない。
ストーリーもほとんど知らなかったので、新鮮な気持ちで楽しめた。
タイトルの『アバター』というのも、ネットでよくある自分の分身のキャラクターで使われているアバターと同じ意味か否かも知らなかった。

DVDなので、3Dの映像は楽しめなかったが、映画自体は良くできた面白い作品だった。
ジェームズ・キャメロン監督の作品は、『ターミネーター』、『エイリアン2』など、どの作品もダイナミックで娯楽性の高い一級のエンタテイメント作品である。
メロメロした『タイタニック』以外は、大好きな作品ばかりである。
この『アバター』も類に漏れず素晴らしいエンタテイメントに仕上がっていた。

まず、何といっても自分の分身である異星人の体とシンクロするという発想が面白い。
シンクロするためには、CTスキャンみたいな特殊な装置に入って睡眠したような状態にならないといけない。
アバターとしての生活と自分自身の生活が交差し、次第にアバターの生活が本来の自分に変化していくのだが、その過程を観ていて共感させられた。
主人公は車椅子の生活をおくっているが、アバターの世界では跳んだり走ったり、自由自在だ。
摩訶不思議で神秘的な世界を体感し、美しい女性のエイリアンとも恋をする。
ネットの世界でのアバターも同じような感覚だと思うが、ネットの世界は架空の世界でリアルになることはない。
この映画自体も架空だが、物語の中では、アバターの実体が存在しているというところが違う。
リアルな存在がある分身だからこそ、実体の生活の空虚さや閉塞感と比べ、アバターの世界の美しさや開放感が浮き立ってくる。
主人公が、引き込まれていくアバターの世界がまた、実に魅力的にえががれている。
青い肌の異星人は、すらりとした長い腕と足を持った長身の姿をしており、猫のような瞳を持ち、人間とは比べ物にならない優れた身体能力を持っている。
正直なところ、映画を観るまでは異星人のキャラクターに違和感があった。
しかし、映画を観ると異星人が本当に魅力的で美しいと感じた。
映画を観進めれば進むほど、その魅力が増していく。
全ての命は繋がっていて、一つ一つの命を尊ぶ。
彼らは命の根源をエイワと呼び、全ての命は生命の樹で繋がっている。
この樹は、祖先の知識のデータベースでもあり、サーバーでもある。
心が通い合うというのは目に見えないものであるが、この映画では物理的に繋がるところがまたユニークだ。
登場人物が魅力的でストーリー展開も分かりやすく、説明的でない世界観の伝え方が上手く、リアルで美しく見たことのない映像に引き込まれていく。
ワクワクし、この世界の魅力に引き込まれていく感覚こそ、キャメロン監督が狙ったことと聞くと納得がいく素晴らしい作品だ。

キャメロン監督は、この映画のために彼らが話す言語まで作ったという。
ナヴィ語は、南カリフォルニア大学の言語学者の協力を得て4ヶ月掛けて生み出した言語だそうだ。
夜になると光る植物や動物達、空に浮かぶ岩山、自然と共に暮らすナヴィ達。
見たことのないリアルで神秘的な映像の数々に驚かされるが、キャメロン監督がリスペクトする宮崎駿監督の『もののけ姫』のオマージュも込められているそうだ。
確かに生命の樹の存在や巨大な木の存在は宮崎駿の世界観に通ずるところがある。

主演のワーシントンは、後2作の出演契約を結んでいるそうで、続編を制作する計画らしい。
久々にこれぞエンタテイメントと呼ぶにふさわしい見事な作品に出会った。
今から続編が楽しみだ。
次は映画館で神秘的な世界を体験したいものだ。

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2010年4月22日木曜日

ダーティハリー



クリント・イーストウッドは、『グラン・トリノ』を最後に積極的な映画出演はしない方針を語っている。
興味の湧く作品に巡り合わない限り出演はしないということだ。

イーストウッドの名が知られるようになったのは、テレビシリーズの『ローハイド』である。
その後、イタリアのセルジオ・レオーネ監督のもとで『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』などのマカロニ・ウエスタンで活躍した。
イーストウッドのヨーロッパでの人気が高まり、1960年代後半にアメリカでの俳優活動を再開する。
何本かの映画に出演した後、1970年に『マンハッタン無宿』でメガフォンを執ったドン・シーゲル監督とタッグを組んで作った作品が『ダーティハリー』である。
勧善懲悪のヒーローではなく、犯人を捕まえるためには手段を選ばぬアウトロー的な刑事ハリー・キャラハンが連続殺人鬼のスコルピオを追い詰めていくアクション映画だ。
当初はシナトラのために作られた作品だったそうだ。
ジョン・ウエイン、マックイーン、ポール・ニューマンなどの名前も上がったそうだが、最終的にはイーストウッドで落ち着いた。
もしもシナトラやジョン・ウエインがハリーを演じて、ここまでヒットしたかどうかは分からないが、イーストウッドでなければ、あの渋くてクールなハリーが生まれなかったのは間違いない。

有名なのは、ハリーが使用するS&W M23という拳銃だ。
通常は大型動物の狩猟に使用される銃で、装填される弾丸は.44マグナム弾という直径が11.2mmある弾丸で、最強の拳銃と言われた破壊力の高い拳銃である。
撮影に使用した銃の入手も困難であったため、最終的にはS&W社に直接依頼して、S映画用として特別に組み立ててもらったそうだ。
映画の中でも両手で構えて撃つスタイルで、その衝撃の強さが伝わってくる。
ハリーが、一発だけ弾丸が入っているかどうか分からないジュを持って、スコルピオに言うセリフは有名だ。

you've got to ask one question:"Do I feel lucky?" Well do ya, punk!

スコルピオ役のアンディ・ロビンソンの偏執的な迫真の演技が、この映画が成功した大きな要因になっている。
映画の後半にスクールバスを乗っ取り、子供達に歌う事を強要するシーンは鬼気迫るものがあった。
この映画の後、いろんな映画のオーディションを受けたが、映画のヒットもあり強烈なイメージが定着してしまい、オファーが全くこなかったそうだ。

ダーティハリーは大ヒットし、この後4作が作られるシリーズ作品となった。
クリント・イーストウッドといえば、ダーティハリーと誰もがいうイーストウッドの代表作である。
これを足掛けに数多くの作品に出演し、ビッグスターの地位を確立した。
また、イーストウッドは、『ダーティハリー』に出演する前から監督業にも興味を持ち『恐怖のメロディー』などの作品を世に送り出しており、当時から監督としての才能の片鱗を覗かせていた。
本格的に監督業に専念してから、『許されざる物』や『ミリオンダラー・ベイビー』と2度のオスカーに輝いている。

テレビ時代、マカロニ・ウエスタン、ダーティハリー、監督業と上り詰めたビッグスターだからこそ、あの深い皺の重厚な顔立ちがあるのだろう。
願くば、俳優活動をやめたなんて言わずに、渋い演技をまた見せて欲しい物だ。


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2010年4月21日水曜日

世界映画名作全史



映画の楽しみは、鑑賞だけではない。
これは映画に限った事ではないが、キャストのプロフィールを知ったり、監督の他の作品や背景を知ると、更に新たな興味が湧いてくる。
アラン・ドロンやスティーブ・マックイーンが時々見せる寂しげな表情の背景には、少年時代に家族の温かさにふれることがなかった生い立ちが関係していると知ると、深みもましてくる。
チャールズ・ブロンソンやショーン・コネリーは、役者で大成するまでに数多くの職につき苦労した時代があって、あの素晴らしい肉体を築いたと知ると、ただのマッチョではないバイタリティーの根源を知ることが出来る。
カトリーヌ・ドヌーヴは、美しく撮らない作品は一切受けないらしく、どんな役柄でもこなす女優とはまた違ったプライドや威厳を持っているからこそ、常に大きな存在感を保っている。
そういう映画には現れない背景や思いを知らずとも映画は楽しめるが、知っているとまた違った楽しみが増える。

ここ最近、そういった情報はインターネットから入手できるようになったが、昔はそんな物はなかったから、大概は本に頼っていた。
スクリーンやロードショーといった雑誌はもちろんのこと、映画に関する本を読むことで、いろんな事を知った。
昔は、映画に関する本も豊富にあり、本屋でも今のアイドル本並のスペースを確保していた。
キネマ旬報の別冊ムックや、写真をふんだんに盛り込んだ芳賀書店のシネアルバムシリーズ、双葉十三郎さんの採点表など、評論物からビジュアル本にリファレンス本など様々な本があった。
シネアルバムなんかは、名前の通り本1冊丸ごとアラン・ドロンの写真とか、オードリー・ヘップバーンの写真で埋め尽くされ、何十巻にもなる人気のシリーズだった。当時人気のあったアラン・ドロンだけでも3、4巻はあったと思う。

そんな本の中でもお勧めは、世界映画名作全史と映画俳優全史である。
この本は、文庫本で発行された本で持ち歩いて電車の中でも読める手軽さが素晴らしい。
名作全史は、戦前・戦後・現代と時代ごとに分けられ、1975年頃までの作品の解説と寸評が書かれている。
普通こういうリファレンス本は、事実だけを書いて作品の良し悪しは書かないが、この本については、著者の思いが書かれていて、辞典というより読み物に近い感覚だ。
当然、読む人の思いと必ず一致する訳はないが、だからこそ自分の思いも浮かび上がってきて、読んでいて面白いのだ。



俳優全史は男優・女優の2冊に分かれていて、前半はメジャーな俳優についてのプロフィールや出演作が書かれていて、映画には現れない生い立ちも書かれている。
本書は、世界映画名作全史の著者である映画監督でもある猪俣勝人氏と田山力哉氏の共著である。
田山さんは、既に亡くなられた方だが、ご健在な頃は毒舌でも知られており、ビートたけしさんのTVタックルにも何度か出演されていた。
酒好きで破天荒、映画も良いものは良い悪いものは悪いと、はっきりというタイプの人物だった。
親交のあったビートたけしさんの作品に対しても、その姿勢は変わらなかったそうだ。
そういう姿勢の人物だからこそ、事実だけを淡々と書いてあるリファレンスとは違った面白さがあるのだ。
双葉十三郎さんの『ぼくの採点表』もまた、ごく短い寸評の中に氏の思いや映画に対する愛情が書かれていて、やはり素晴らしい本である。

スポーツにしろ、アートにせよ、どんな趣味もその対象物だけでないところに面白みがある物だ。
好きになればなるほど、その好奇心も大きくなり、際限もなくなる。
少し昔の本なので、今も売っているかどうかは知らないが、アラフォー以上の年代には懐かしい名前の役者や作品が並んでいて、嬉しくなることは間違いない。
お勧めの本である。

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2010年4月20日火曜日

ジャッカルの日



英国の社会派サスペンス作家フレデリック・フォーサイス原作のサスペンス映画。
ベストセラー作家であるフォーサイスは、英国生まれで、空軍からロイターの特派員やBBCの記者を経て作家になり、この『ジャッカルの日』で一躍ベストセラー作家になった人物である。
本作の後、『オデッサ・ファイル』や『戦争の犬たち』などの作品を執筆し、いずれもベストセラーとなり、映画化された。
特に『戦争の犬たち』は、フォーサイス自身が傭兵を雇い、赤道ギニアのクーデターを画策したと思われる事件が起こり、その時の事をベースに作られた作品と言われている。
本作は、アルジェリア独立に反対するフランスの極右テロ組織OSAが、アルジェリアからの撤退を決めたド・ゴール大統領の暗殺を画策し、OSAが雇ったジャッカルと呼ばれる英国人暗殺者と、それを阻止しようとするルベル警視との知的な対決を描いたサスペンスである。
『ジャッカルの日』は、フィクションであるが、背景や事件は事実に基づいており、リアルな暗殺劇に仕上がっている。
監督は、『真昼の決闘』、『地上より永遠に』、『わが命つきるとも』、『ジュリア』などで知られるフレッド・ジンネマン。
ジンネマンは、この作品を緻密に描写し、原作の面白さを損なわないスリリングなサスペンスに仕上げている。

映画では、暗殺者ジャッカルを英国人俳優エドワード・フォックスが演じている。
金髪で痩身、冷徹な顔立ちのフォックスは、ジャッカルのイメージにピッタリのキャスティングである。
OSAから依頼を受け、イタリアから南フランスのルートで潜入するのだが、潜入までの映像が面白く、リアルさを増す内容となっている。
分解して細いパイプに隠せる特殊なライフルの作成を依頼し、完成した銃を試射するシーンは、有名だ。
偽造パスポートや銃を隠して運ぶためのアルファ・ロメオなど、緻密且つ冷静に準備を進めていく。
フランス潜入後に想定外の事態に遭遇しても、途中に知りあった未亡人などを利用し確実に目標に近づいていく。
一方、OSAの画策を察知したフランス政府はパリ警察の敏腕刑事であるルベル警視を暗殺阻止の全権責任者に抜擢し、英国との裏ルートで本格的な調査を進める。
時間の流れを追った緻密なストーリー展開は原作に劣らない秀逸さだった。
ド・ゴール大統領に迫っていくジャッカルの巧妙で冷静な行動とジャッカルを追い詰めていくルベル警視の静かな攻防が、緊迫感にあふれ、一気にラストまで展開していく。
あの原作をよくここまで素晴らしい作品に仕上げたと感嘆する。
さすがジンネマンと思わせる素晴らしい作品だった。

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2010年4月19日月曜日

メリーゴランド



中学生の頃に観たイタリア映画だ。
レナート・チェスティという男の子が主人公のいわゆる泣ける映画である。
映画の邦題は、『メリーゴーランド』だが、原題は冬の終わり頃に降る雪、なごり雪というタイトルだ。
邦題は映画の哀しいラストシーンから付けられている。

母親を亡くし、父親と2人で暮らす少年ルカ。
ルカの願いは、仕事で忙しい父親と2人だけの時間を過ごすことだった。
待ちに待った夏休み。
ルカは父親と地中海へバケーションすることになり、大喜び。
しかし、旅行先には父親の恋人が待っていた。
ルカは、楽しみにしていた分だけ、失望は大きかった。
そのことに気付いた父親の恋人は、2人だけの時間を作ってあげるよう父親に話すのであった。
父親もその言葉に納得し、ルカと2人だけでスキーに出掛けることになった。
嘻々として喜ぶルカ。
やがて、冬の終わり頃に2人はゲレンデを訪れ、本当の2人だけの時間を過ごすのであった。
しかし、ルカに不幸が襲う。
スキーで転倒して、ルカは大けがを負ってしまった。
医師の診断は、脊椎損傷による急性骨髄性白血病だった。
治る見込みのない病に打ちひしがれる父親。
日に日に容体は悪化していった。
そんなルカの最後の願いを叶えるため、ルカを抱きかかえて、夜の遊園地に行った。
閉園後の遊園地で無理をいって二人だけのために開園してもらえることになった。
父親に抱きかかえられルカはメリーゴーランドに乗った。
やがて、最後の時が訪れる。
揺れるメリーゴーランドに乗り、ルカは父親の腕の中で天国へ旅立つのだった。

嵐の夜、ルカの死を受け入れることができず、虚ろな姿の父親には後悔する気持ちに押しつぶされそうになっていた。
父親は、ルカが父親にプレゼントしようと思っていたレコード盤を見つけた。
美しい旋律が、さらに哀しさを増すのであった。
この回想シーンから映画は始まっている。

シチュエーションは違うが、『天使の詩』に似たストーリーだ。
母親を亡くし、父親とのすれ違いから不幸な結末を迎える。
後悔、先に立たず、という内容だ。
中学生の頃から、こういう泣ける映画には弱い。
映画を観る前には、身近な人が亡くなること以外でこういう感情を受けたことがなかった。
この映画は、父親と行った映画だ。
エンドロールの後、館内が明るくなりボロボロ泣いているお父さんの姿が忘れられない。

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2010年4月14日水曜日

リバー・ランズ・スルー・イット





A River runs through it

今やブラッド・ピットは、トップスター中のトップスターである。
どの映画に出ても注目を浴び、大きな話題を呼ぶ。
日本での人気も高く、何度も来日している。
彼が、一躍有名になったのは、ロバート・レッドフォードが監督したリバー・ランズ・スルー・イットである。
1900年代の初頭。
アメリカ・モンタナ州の田舎町で、厳格な牧師の父と二人の息子が暮らしていた。
兄は、秀才で生真面目な性格。
弟は、明るく才能豊かだが、破天荒。
それぞれ性格の違う親子に共通するのは、父が教えたフライフィッシングだった。
二人は成長し、兄は大学講師、弟は新聞記者と巣立って行く。
弟は酒とギャンブルにのめり込み、気の向くまま自由に生きていた。
彼らの人生に様々な出来事が起こるが、それでも川は何も変わることなく流れつづける。

この映画の見所は、何といってもフライ・フィッシングのシーンだ。
木漏れ日に光る水面の中で、キャストされたラインが弧を描く映像は、美しく映画の主題を印象付ける以上の出来栄えだ。
ポスターの写真がまさにその映像だ。
この映画でアカデミー賞の撮影賞を受賞したのも頷ける。

それと、ブラッド・ピットの存在感がすごい。
意識したかどうかは知らないが、この頃のブラッド・ピットは、若い頃のロバート・レッドフォードに雰囲気や見た感じそっくりなのだ。
金髪に、ほんの少しえらが張った端正な顔立ちや、内に何か秘めた雰囲気がロバート・レッドフォードにオーバーラップする。
この映画以降もブラッド・ピットはロバート・レッドフォードを師として尊敬しており、『スパイ・ゲーム』では共演を果たしている。
ビッグスターに育つ人間は、紙一重の狂気を演じられると思っているが、この映画のブラッド・ピットもただかっこ良いだけでなく、観ている側がはらはらする危うさを感じた。
何年かあとに撮られた『レジェンド・オブ・フォール』という映画も本作と似たような映画だったが、やはりブラッド・ピットは破天荒な人生を歩み、生き急ぐ人物を演じていた。

下積みが長かったこともあり、映画に取り組む真摯な姿勢は、共演者も認めるほどだという。
ただただかっこ良いだけでないブラッド・ピットのルーツがこの映画で見られるのだ。


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2010年4月12日月曜日

エアフォース・ワン




エアフォース・ワンは、アメリカ合衆国大統領が搭乗する航空機のコールサインである。
通常は、海外への訪問や緊急時に司令をするための専用飛行機に付けられる。
因みに副大統領が搭乗する場合は、エアフォース・ツーとコールされるそうだ。





このエアフォース・ワンにテロリストが乗り込み、大統領自らが彼等と戦うといった内容の1997年公開のアクション映画だ。
監督は、Uボートで一躍有名になったドイツ出身のウォルフガング・ペーターゼン。
ウォルフガング・ペーターゼン監督の主な作品は以下の通りだ。

U・ボート Das Boot (1981)
ネバーエンディング・ストーリー Die
第5惑星 Enemy Mine (1985)
ザ・シークレット・サービス In the Line of Fire (1993)
アウトブレイク Outbreak (1995)
エアフォース・ワン Air Force One (1997)
パーフェクト ストーム The Perfect Storm (2000)
トロイ Troy (2004)
ポセイドン Poseidon (2006)

基本的には娯楽アクション映画の監督だが、『第5惑星』のような珍作もあれば、本作や『ザ・シークレット・サービス』のような大ヒット作品もある。
『第5惑星』で、評価も興行的にも失敗した後、『ザ・シークレット・サービス』が成功しなかったら、『Uボート』だけで終わっていたかも知れない。
個人的には、当たり外れの多い監督だと思う。
この映画が良いのは、ややこしい事を考えずに脂ののったハリソン・フォードを大統領役に起用した事だ。
この時期、彼は55歳。
行動力のある大統領役にピッタリ合う時期だった。
ハリソン・フォードは、ビル・クリントン大統領主催のパーティの席でエアフォース・ワンの見学をお願いし、撮影しない条件で許可を得て、架空ではあるがリアルな機内を再現したそうだ。
ウィリアム・H・メイシーをはじめとした共演者も良い配役だが、やはり一番は怪優ゲイリー・オールドマンが素晴らしい。
ひとつの事を狂信的に信じる人間は、彼ならではの迫力とリアリズムがある。
レオンほどの異常さはないが、テロリストのリーダーにはピッタリの配役だ。

エアフォース・ワンが、いくらジャンボジェット機とはいえ、あの閉塞された空間であそこまで派手なアクションに仕上がった物だ。
もうひとつ、アクションの爽快感や盛り上がりに大きく影響しているのが、巨匠ジェリー・ゴールドスミスの音楽だ。
盛り上がりのあるメイン・タイトルの高揚感は、さすがゴールドスミスと感心する迫力がある。
ゴールドスミスの音楽でワンランク上に仕上がった作品も少なからずある。
今もなお、ゴールドスミスのメイン・テーマを聴くだけで映画の情景が目に浮かんでくる。
映画は音楽も大事な要素だと改めて実感する。

口うるさい人にはつっこみどころ満載の映画かも知れないが、後味爽やかなよくで来た娯楽作品である。

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トロン


トロンは、ブエナビスタ配給の1982年公開のSF作品だ。
ディズニーが始めてCGアニメーションを取り入れた作品でもある。
CGといえば、今でこそ実写かと見紛うほどの映像を可能にしたが、当時はまだそこまでの技術はなく、CG画像に着色したり、アナログな方法で処理して映像に仕上げていた。
映画の内容はといえば、かなり無理はあるのだがファンタジー作品と思えば、なかなかユニークで面白い。

エンコムと呼ばれる企業の大規模なコンピューターの中で、MCPと呼ばれるマスターコントロールプログラムが、色んなプログラムを取り込み、支配していた。
それをエンコムのエンジニアであるアランが作り出したトロンと呼ばれる監視プログラムが、MCPを調査するのだが、MCPはエンコムの社長と結託してアクセスを閉鎖する。
エンコムの社長にプログラムを盗作されたフリン(ジェフ・ブリッジス)も外部から進入を試みていた。
フリンの元同僚のアランの話を聞き、エンコム社のコンピュータにアクセスしようとしたが、MCPの策略により、フリンはデジタル化されコンピューターの世界に取り込まれる。

と、かなり荒唐無稽だが、コンピュータの世界が面白いのだ。
コンピュータの世界のプログラムたちは、回路のような模様の服を着ていて、そのラインが青白く光っているのだ。
光り方は、ブラックライトで光る蛍光色のような光り方だ。
面白いのは、ユーザ信望者のプログラムは青く光り、MCPの手下たちはオレンジ色に光る。
MCPに囚われたプログラムたちは、ゲームをさせられ、負けたプログラムは消滅させられる運命にある。



健康保険の会計プログラムや何やがフリスビーのゲームやボールスローで対決するのだ。
この映画の一番の見所は、ライト・サイクルというバイクによるゲームだ。
四角いスペースを光の帯を引きながら疾走し、その帯で相手の行く先を妨害する単純なゲームだ。
この映像が中々スピーディで迫力があって面白いのだ。
この他にも、タンクやゲート型の乗り物や戦艦ぽい乗り物が現れるのだが、その造形が当時のCGながら、良いデザインである。
通信を司るプログラムが威厳のある爺さんだったり、お色気むんむんのプログラムがいたり、擬人化のされ方がまた楽しい。



このトロンが、20年ぶりに第2弾が制作され、今年の年末に公開される。
それも、IMAX 3Dでの公開だ。
ジェフ・ブリッジスも出演し、彼の息子がまたコンピュータの世界に取り込まれて、ひと悶着あるようだ。
当時、限界のあった映像がかなりリアルで迫力のある映像になるのは、間違いない。
ディズニーのオフィシャルサイトで公開されているトレイラーを見ても見事な出来栄えだ。
ライト・サイクルもかなり進化している。
うーん、公開が待ち遠しい。
公開までにまだ未見の人は、DVDもあるのでビデオ屋さんで探してみては。