2010年10月24日日曜日

やさしい嘘と贈り物







やさしい嘘と贈り物

この映画は、ニック・ファクラーという24歳の若者が脚本・監督した心温まる作品だ。
この作品の脚本を書き上げたのが、17歳の時、名優マーティン・ランドーが惚れ込み、制作総指揮を買って出たそうだ。
主演は、『エド・ウッド』でアカデミー賞を受賞したマーティン・ランドー。
共演のエレン・バースティンも『アリスの恋』でアカデミー賞を受賞。
二人の名老優が、綴る物語は優しく悲しい。

ロバートは、スーパーで働く一人暮らしの老人。
クリスマスが近づいていたが、一人で過ごす寂しい日々を送っていた。
そんなある日、向かいに暮らすメアリーと知り合う。
メアリーは、以前からロバートのことを気にかけていたのだ。
メアリーの誘いでロバートは、彼女とディナーに出掛けるのであった。
他愛のない話に少年と少女のように時めく二人。
雪の舞う町をゆく聖歌隊を眺めながら、手を重ね合う。
その日から、町を二人で歩き、子供のようにそり遊びに興じ、楽しい時間を過ごすのであった。
やがて、クリスマスを迎え、ロバートは忘れていた日を思い出す。

ここからはネタバレなので、まだ見ていない人は、ご注意を。

楽しいクリスマスの夜をメアリーと共に過ごし、幸せな気持ちに包まれていた。
しかし、その翌朝、ロバートが目を覚ますと、メアリーの姿が隣になかった。
ロバートは、メアリーに置き去りにされたと思い込み、錯乱してしまうのであった。
幾度もつながらぬ電話をかけ、混乱していた。
その時、メアリーが帰ってきた。
ロバートはメアリーに毒づき、混乱は収まらず、メアリーの家に飛び込む。
そこでロバートは壁に飾られたロバートとメアリーやスーパーの上司マイクと笑顔で並ぶ写真を目にする。
ロバートは認知症でメアリーや息子のマイクのことを忘れていたのだ。
メアリーやマイクは、ロバートに気づかれない様に影から支えていたのであった。
一瞬、記憶を呼び起こしたが、次の瞬間、意識を失い倒れてしまった。
ロバートは病院に運ばれるが、残された時間はわずかだった。
枕元に寄り添うメアリー。
手を握りあう二人の姿がそこにあった。

認知症という題材を愛情深く繊細に紡いだ作品は、24歳の若者が撮ったとは思えない本当に素敵な作品だった。
忘れた過去は取り戻せない。
それを新しい思い出で埋めようとするメアリーの姿が切なく美しい。

少し早いがクリスマスの夜、愛する人とみてほしい作品だ。
悲しいが、心の芯が温かくなってくるだろう。
二人の老優の素晴らしい共演があって、24歳の若者の才能が開花した。
今後の作品に期待したい。

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