2010年2月27日土曜日

この森で、天使はバスを降りた


1996年のサンダンス映画祭、観客賞を受賞。
5年間の服役を終えたパーシー(アリソン・エリオット)。
彼女はギリヤドという田舎町でバスを降りる。
愛想のないハナ(エレン・バースティン)が経営するレストラン「スピットファイアー・グリル」で働くことになる。
閉鎖的な田舎町であるがゆえに彼女はよそ者扱いで見られ、彼女の過去の噂話も囁かれていた。
偏屈なハナともうまくいかなかったが、ハナが愛を骨折しパーシーに病院まで運ばれたことで徐々に心を開いていた。
しかし、ハナの甥のネイハム(ウィル・パットン)は前科者のパーシーを信用できず、妻のシェルビー(マルシア・ゲイ・ハーデン)に店を手伝うように命じる。
夫の命令でシェルビーが店を手伝うようになるのだが、シェルビーもパーシーと心を通わせていく。
ある晩、ハナの頼みで缶詰を入れた麻袋を裏庭に置くと、正体不明の男が袋を持って立ち去っていった。
シェルビーは親しくなったパーシーに、ハナは息子をベトナム戦争で亡くしたことを話してくれた。
ハナもまた、心に傷を負った過去のある女性だったのだ。
ハナは過去の思い出を忘れるために店を売りに出していたのだが、10年経った今も買い手がつかないままであった。
それを聞いたパーシーは、応募料100ドルで店への夢を綴った作文を募集し、最優秀者に店をプレゼントするアイデアをハナに話した。
かくして、ハナ、パーシー、シェルビーの三人で考えた作文募集の広告を全国に紹介するのであった。
すると、彼女たちの想像をはるかに超える手紙が全国から集まりはじめ、彼女たちは大金を手にした。
町の住民たちは彼女たちをやっかんでいたが、ハナから審査員に頼まれたことで町のあちらこちらで手紙を読むようになり、町全体のイベントとなっていった。
そんな時、パーシーは正体不明の男が住む小川にある小屋を見つけた。パーシーは男と出会うのだが、その男は彼女を許すかのように頭をやさしくなでるのであった。
ハナはパーシーが男を追いかけたと思い込み、パーシーに怒りをぶつけてしまう。
その男はベトナム戦争で心傷ついていた息子のイーライだったのだ。
次の日、ハナに激しく叱責されたパーシーは傷心のまま姿を消すのであった。
時を同じくして全国から集まった大金がなくなったことで、町の住民はパーシーが誰かの共犯者と共にお金を盗んだと思い込み大規模な山狩りを始めた。
パーシーを信じるシェルビーは、二人だけの秘密の安息の場所である教会でパーシーを見つける。
そこで、パーシーはシェルビーに辛く悲しい過去の話を語るのであった。
パーシーは、山狩りからイーライを救うため森に駆け込み、イーライに逃げるよう叫ぶのだが、川に落ち流れに飲み込まれ命を落としてしまう。
彼女が死んでしまった後、大金はネイサンが盗まれないように隠していたことがわかる。
パーシーは、みんなの心を癒そうとしていただけで、何も非がなかったことを知る。
パーシーがいなくなったスピットファイアー・グリルに一人の男が現れ、ハナはその男に抱きついた。
イーライが、ハナの元に帰ってきたのだ。
それから時が過ぎ、赤ん坊を抱いた若い女性がバスを降りた。
彼女は作文コンテストの最優秀者であった。

この映画の魅力は、アリソン・エリオットに尽きる。
心優しいが故に傷つくパーシー。
周りの人達を癒し幸せにしていきながら、身に覚えのない疑いで命を落としてしまう。
人の心にある猜疑心が彼女の命を奪ってしまった。
なんとも悲しくてやりきれないお話である。
ただ、悲しいが故に彼女の優しさが天使のように思えてくる。
原題は The Spitfire Grill 。
「この森で、天使はバスを降りた」とは良い邦題をつけたものである。
良い映画なんだが悲しいなあ。



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