2010年2月25日木曜日

ゴッドファーザー



好きな映画のベスト10を選ぶとしたら、間違いなくゴッドファーザーを選ぶだろう。この映画は、イタリアのシシリー島からの移民ビトー・コルレオーネが築いたマフィアのファミリーに起こる様々な出来事を綴った壮大なドラマだ。映画では、他のファミリーとの抗争、仲間の裏切り、暗殺といったマフィア同士の仁義なき戦いを描いているが、映画の主題は家族である。何を今更、説明されなくっても知ってるよ、という感じだが、1972年に製作されたこの映画は、パート2と続き、パート3で完結する。名匠フランシス・フォード・コッポラの名を世界に知らしめた作品でもある。
脚本はコッポラとは同名の原作小説の作家、マリオ・プーゾ。コッポラは、原作から脚本やコンテを構想するのに、原作をスクラップブックに1ページずつ切り張りし、その余白や周りにメモ書きをしたそうだ。特に重要なシーンは線を引き、シーンのイメージを書き記して撮影したそうだ。
映画にふさわしい壮大で哀愁に満ちた音楽は、太陽がいっぱいや甘い生活などのフェリーニ作品で知られるイタリアの大作曲家ニーノ・ロータ。

ファミリーのドン、ビトー・コルレオーネには、マーロン・ブランドーが演じた。ブランドーは当初、パラマウントの上層部からは映画の製作を遅らせる問題児として気に入られなかったが、コッポラの粘りで2つの条件をブランドにのませることで彼のスクリーンテストを認めたそうだ。その1つは、ノーギャラでスクリーンテストを受けること、もう1つは撮影を1日でも遅らせないこと。そして迎えたスクリーンテストの当日、ブランドは近くにあったチーズを口に含み、髪に靴墨を塗って、ビトーはブルドッグみたいなんだろうと演じて見せたそうだ。最後にはティッシュを口に含んで完璧に演じたらしい。こうして、あの陰と重みのあるドンが生まれた。今となっては、ブランド以外の役者は思いもつかない。

同様に主役のマイケルを演じたアル・パシーノも当初は、上層部にはお気に召さなかったそうだ。地味でお客を呼べるスターではなかったからだ。会社は、ある愛の詩のライアン・オニールやレッドフォードを推した。しかし、コッポラは原作を読んでこの役は、アル・パチーノしかいないと思っていた。会社側の圧力で、ソニー役のジェームズ・カーンやマーチン・シーンにもスクリーンテストを受けさせた。それでも、コッポラはアル・パチーノを押し続け粘り勝ちとなった。撮影中も会社側は気に入らなかったようだが、ソロッツオ殺害のシーンの後、会社側の態度は一変した。映画が公開され、彼もブランド同様に他の役者には代わりが務まらない存在感を示したのは言うまでもない。

長男ソニー役のジェームズ・カーン、相談役の義兄ヘイゲン役のロバート・デュバルもコッポラの選んだ役者達だ。陽気で気の短い長男ソニーもカーンの男臭さにぴったりはまり、デュバルの冷静な相談役も見事なキャスティングだ。ダイアン・キートンは、以前からアル・パチーノとの付き合いがあり、二人が話す様子や空気を感じキュートでエキセントリックな魅力のアル彼女をケイト役に決めた。あらためて、コッポラの役者を見る目の凄さを実感する。

ソニーの役には、ロバート・デ・ニーロも応募していた。コッポラは、デ・ニーロの演技の素晴らしさに驚いたが、ソニーのイメージには合わなかった。この時にコッポラはデ・ニーロの存在を忘れず、パート2で若き日のドン・ビトーを演じさせたのだ。

ドン・ビトーの娘コニーは、コッポラの姪であるタリア・シャイアが演じた。彼女は、ロッキーのエイドリアン役でも知られている。音楽のアレンジには、父のカーマイン・コッポラも加わっており、パート3では、娘のソフィア・コッポラがマイケルの娘役として出演している。ゴッド・ファーザーは、コッポラ一族の映画でもあるわけだ。ちなみにカーマイン・コッポラは、タッタリア・ファミリーとの抗争シーンの中で、アジトに詰めるマフィアたちの一人としてピアノを弾いている。
写真のシーンは、映画の冒頭のコニーの結婚式。ビトーの名付け子でもある歌手のジョン・フォンテーンが祝福に訪れたシーンだ。因みにモデルはフランク・シナトラと言われているが事実はどうだか。

映画のクライマックス。対立する他のファミリーのボスを粛清するシーンが、コニーの子供の洗礼式と同時進行で展開する。コッポラならではの緻密な場面展開と荘厳さが伝わってくるシーンだ。全3作の中でも最も素晴らしいシーンだと思う。

映画の最初のコニーの結婚式では、マイケルは、父ビトのファミリーの仕事を忌み嫌っている。しかし、ビトが暗殺されかかり瀕死の重症を負ったことや、ソニーの死などの運命に翻弄され、ビトの後を告ぐことになる。徐々にマイケルがファミリーを守るため、非常な人間に変わっていく皮肉な運命を描いている。パート2、パート3では、マイケルが命を懸けて得たものを失っていく姿が描かれている。
この壮大なホームドラマは、何度見ても面白いのだ。美術、音楽、演出、演技、編集のすべてが高いレベルであり、かつストーリーが面白い。この面白さをうまく表現できないが、また見たくなってきた。
秋の夜長にまたゴッドファーザーでも見ようかな。


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