2010年2月26日金曜日

ネコナデ



2年前の9月、有給休暇の半端をとり、半日仕事をして昼から帰った。元々、休むような用事はなかったので、会社の近くにある京都みなみ会館へ映画を観に行った。この映画館は、席数も少なく、小さなスクリーンの町の映画館だ。スクリーンの周りは臙脂のビロードの幕があり、金文字で「京都みなみ会館」と書かれている。昔、中学の時によく行った田舎の三本立て映画館に似た雰囲気だ。
京都みなみ会館では、封切り館のように1本の映画を上映するのではなく、複数の映画を時間を分けて上映している。上映する作品もメジャーな最新作品ではなく、インディーズのかおりがする作品や低予算ながら良い作品を邦画・洋画の区別なく上映している。最近流行りのシネコンとは違った味のある映画館だ。
映画館の待ち合いも昔ながらの感じで、次の上映を待つお客さんが、ニコニコして待っている。おばちゃんどうし、映画好きのおにいさんなど、ほのぼのとして良い感じだ。
そんな魅力やマイナーな良い作品を扱う映画館が少ないので、結構人気のある映画館なのだ。映画上映前のアナウンスがまた良い。「館内のクーラーが少し寒い方には、膝掛けをお貸ししますので、お申しつけ下さい。」なんて言ってくれる。

で、何を観たかというと、先日ブログにも紹介したが、ネコナデを観に行った。
大杉漣さん演じる自分にも周りにも厳しい中年サラリーマンが、1匹の子猫に出会って生き方が少し変わり始めるという物語だ。監督の大森美香さんは、大杉漣さんを主役にイメージして作品を作りたかったらしく、大杉漣さんが実に良い。大杉漣さんは主役の鬼塚人事部長。名前のとおりのIT企業の鬼部長なのだ。新人には厳しい研修を行い、能力の低い者は容赦なく切り捨てる。
だが、会社の帰り道にベンチに座り胃薬を飲んでから帰宅する。実はそういう生活に少なからずストレスに堪えているのであった。
そんなある日、子猫と出会いつぶらな瞳で見つめられ、会社が研修のために借りているマンションでこっそり子猫を飼い始める…。
これ以上話すと楽しみにしている人に悪いので書かないが、優しい良い映画なのだ。

この映画の良いところは動物が好きな人には分かる描写が上手く描かれているところだ。
捨てられた子猫を前にし、後ろ髪を引かれる思いに堪えて背中を向ける姿
部屋からいなくなった子猫を捜し回り、見つけた時のホッとした嬉しそうな表情
などなど、分かる分かるその気持ちというシーンが散りばめられている。誰もが経験しただろうシチュエーションなのだ。大杉漣さんも役と自分の境界がなくなるのを感じながら演技したそうだ。

久しぶりに映画館で映画を見たが、なかなか良いものだ。
ネコナデ、お勧めである。


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