私はアニメオタクではないが、宮崎駿さんの作品は毎回観ていて、そのオリジナリティにあふれる世界観や、奥行きのあるスケールの大きな表現に感心させられる。細部までこだわった絵の表現力、ストーリーの奇想天外な面白さ、久石譲の琴線に触れる美しくダイナミックな音楽、的確な声優のキャスティング、そして何よりも観ていて楽しいパワーを感じさせる作品の魅力に溢れている。クリエイターというのは彼のような人を言うのだろう。
彼の作品で必ず表現されるのは、大きな空や海だ。透き通り澄み切った突き抜けるような空や海の表現は心地よく、開放感に溢れている。『紅の豚』でも、海に浮かぶ要塞のような島の入江にある浅瀬にポルコの飛行艇を停泊させるシーンがあるが、透き通った水に砂浜の白い砂が軽く舞い上がる描写は素晴らしい。
飛行機が飛び交うシーンはもちろん素晴らしいのだが、こういう何気ないカットまで手を抜かないところがすごい。ポルコが操縦する真紅の飛行艇が、またカッコイイのだ。こんなところが、他のアニメーションと大きく水を開けて素晴らしいのだろう。
毎回、宮崎駿作品は声優も素晴らしい選択がされている流行りの俳優やアイドルも抜擢されるが、作品や役に合わない選択はされない。本職の声優と見事なバランスでキャスティングされる。キムタクも彼が相応しかったから配役されたという必然性を感じるキャスティングだった。
『紅の豚』では、ポルコ役に森山周一郎、ジーノには加藤登紀子と渋い配役だ。森山周一郎といえば、ジャン・ギャバンやリノ・バンチュラといった重厚だけど味のある役者さんを当てることのできる素晴らしい声優さんだ。声の艶といい、豊かな雰囲気のある表現力は唸らせられる芸術品だ。加藤登紀子さんの酸いも甘いも噛み分けた女性の吹き替えが、これまた素晴らしい。地の声の美しさに彼女自身が歩んだ人生経験が加わり、哀しみを胸の奥にひそめた美しい女性を見事に当てていた。お二方とも本当に見事な表現力で圧倒的な存在感を感じさせられた。
映画は総合芸術とよく言うが、確かにそのとおりだ。アニメーションは実写でない分だけ余計に細部まで目がいくので、より高いクオリティが求められるのかも知れない。
このクオリティの高さと面白さが、宮崎駿作品が世界で受け入れられる理由だろう。
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