2010年2月25日木曜日

007カジノ・ロワイヤル



007シリーズは、ショーン・コネリー主演の第1作『Dr.NO』以来、スパイを主役においたサスペンス・アクション映画のスタンダードのシリーズとして人気を博してきた。米ソ冷戦時代から始まり国際紛争を背景に英国の諜報機関MI6の諜報員である007ことジェームズ・ボンドの活躍を描いてきた。
ショーン・コネリー、ジョージ・レイゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアーズ・ブロスナンと続いてきたボンド役は今回のダニエル・クレイグで6人目だ。映画を観る前から今回のダニエル・クレイグはかなり異質な感じがしたが、映画を見終えて、彼が選ばれた理由が理解できた。それは、今までのジェームズ・ボンドのイメージと少し違う映画の作りだからだ。

今までのボンドのイメージは、英国出身の少しキザな伊達男の諜報員で、女たらしで女性に弱く、どんな困難に直面しても、秘密兵器をスマートに使いこなし、解決するという感じだった。派手でスリリングな展開の娯楽作品だ。それはそれで楽しい映画だった。ショーン・コネリーの颯爽としたかっこよさや、ロジャー・ムーアの洒落た雰囲気は007の洗練されたスパイのイメージにぴったりの配役だった。映画のクライマックスにも大掛かりな銃撃戦があり、スケール感の大きな徹底した娯楽作品だった。
工夫を凝らした秘密兵器やかっこ良いボンド・カーにセクシーなボンド・ガールとその派手な演出やかっこよさが最大の魅力だった。イアン・フレミングが世に送り出したジェームズ・ボンドは、スパイの代名詞として登場し、ジェームズ・ボンド以降、様々な亜流ボンドが登場したのは衆知の事実だ。

今回、ジェームズ・ボンド役が、ピアーズ・ブロスナンからダニエル・クレイグに変更したことで、発表当初はその違和感からかなり反発があったようだが、映画公開後は作品の仕上がりが素晴らしく、新作でのボンドのイメージを変えたこともあり、大きな評価を得ているようだ。ダニエル・クレイグは、今までのボンドと違いかなり影の部分や、複雑な内面をクローズアップされる展開に向いている。原作のイメージにも最も近いとのことだ。

映画の作り方も前作までとはガラッと変わった。まず、秘密兵器やボンドカーは登場するが、必要以上の説明シーンもなく、自然に登場する。説明的な場面が少ないのだ。悪役は個性的だが、悪役に過剰な演出をせず冷酷無比で個性的なキャラクターを演じさせている。アクションは迫力満点で、もしかするとこれまでの作品で最高の迫力だと思うが、生身の人間がぶつかりあうアクションに重点を置き、大人数の銃撃戦などの派手な演出は抑えられている。その分、ボンドの感じる痛みが、ダイレクトに伝わってくるのだ。ここら辺が、これまでの007とは全く違うと思う。映画の前半にある追跡シーンなんかは、テンポも内容も素晴らしく、見ていてハラハラさせられた。テンポもストーリーも重視し、007の香りを大事にしながら娯楽作品に仕上げられている。褒め過ぎかもしれないが、素晴らしい作品だ。

正直な感想だが、これほど面白く仕上がっているとは思わなかった。007シリーズの中でも1、2の素晴らしい出来上がりだと思う。007映画としてだけでなく、映画としても素晴らしい出来上がりだ。
これまでのボンド同様にタフでかっこよく魅力的に登場させ、アクションシーンも十二分に楽しめる出来に仕上げた上で、抑えた渋い映像とストーリー展開をこなしているのは、脚本・演出が素晴らしく、ダニエル・クレイグの抜擢が成功だったからだろう。十分に楽しめる娯楽作品であるのは今までどおりであるが、映画の奥深さも増し今後も大いに期待している。



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