神話というのは、ギリシャ神話にしろ古事記や日本書紀の神話にせよ、国の成り立ちや人間がどうして生まれたのかなどというこの世の始まりの物語だ。当然、主人公は神様だ。海の神や太陽の神など八百万の神々が登場するファンタジーだ。日本の場合は、奈良時代に歴史書として大和朝廷が編纂したものだが、天皇の神格化など政治的な色合いも強い書物だ。実在したかどうか分からない天皇や皇子も登場する。
有名なところでは、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)、須佐之男命(スサノオノミコト)だが、東宝が映画1000本製作記念として作られた映画が、「日本誕生」だ。古事記や日本書紀のエピソードを元に日本武尊を主人公にして日本神話の世界を映像化した作品だ。
何より凄いのが、登場するスターの豪華さだ。今で言うなら、高倉健と渡哲也、菅原文太、渡辺謙に松方弘樹とにかくビッグな名前を総動員した感じだ。特撮は、ウルトラマンやゴジラの円谷英二と東宝が会社を上げて作った作品だ。
まず主演は、日本映画俳優の代表、世界の三船だ。日本武尊と須佐之男命の二役を三船敏郎が演じている。あの豪快で華のある三船敏郎が、この悲劇の皇子を演じている。日本武尊は、取り巻きの大伴氏の謀略もあり、父の景行天皇から恐れ嫌われ、少ない兵を率いて西方の熊曽討伐に行かされたり、戦から帰ると休むまもなく東方への戦に行かされるなど、虐げられる。武勇に優れ人々から好かれる皇子であるにもかかわらず、不幸な目に合う悲劇のヒーローなのだ。
喜ぶときも豪快、悲しむときも大声で泣き、民と笑い、ともに泣く明るく豪快なキャラクターに三船敏郎はぴったりだった。
女優陣も超豪華なトップスターがずらり。水野久美、香川京子、上原美佐、原節子、司葉子、田中絹代と写真を並べただけでも華やかだ。司葉子が演じる御子の弟橘姫は、言葉で言えない美しさだ。原節子は、天の岩戸に隠れる天照大神役だが、その神々しさは特筆物だ。さすが記念作という感じだ。
敵役や脇役の俳優も超豪華だ。父である景行天皇には中村鴈治郎、熊曽兄弟には志村喬と鶴田浩二、日本武尊を裏切る久米八腹の上田吉二郎が演じている。これ以外にも黄門様でおなじみの東野英治郎や、今も活躍中の宝田明、ウルトラマンの博士役で有名な平田昭彦など、私の年代ならよく知っている顔ばかりだ。
中でも凄かったのは、天照大神が天の岩戸に隠れたときに、どうにか外に出てきてもらう法はないかと相談する八百万の神々が凄い顔ぶれだ。当時の喜劇界の大物が大集合という感じだ。
エノケンこと榎本健一、有島一郎、磯じまんの三木のり平、沢村いき雄、柳家金語楼、加東大介、小林桂樹に加え、踊りを踊る天宇受女命に乙羽信子、天岩戸をこじ開ける力持ちの手力男命に朝汐太郎と凄い顔ぶれだ。因みにこの世の初めを作った神には、ズビズバの左卜全が扮していた。
映画と言うのはよく練られた脚本や名優の素晴らしい演技を観て感動するものであるが、こういうオールスターが勢ぞろいするお祭りのような映画も観ていて楽しいものだ。しかし、この映画はこれだけの人物が登場するから時間も長い。全編で3時間の長尺なのだ。
というわけで、珍品というと失礼かもしれないが、いつもはあまり観ない映画を観た。
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