2010年2月25日木曜日

二十四の瞳



壷井栄原作、木下恵介監督の名作「二十四の瞳」。昭和29年の作品だ。瀬戸内海に浮かぶ小豆島の分教場で出会った12人の生徒達との戦前戦後に渡った絆を描いた心に響く不朽の名作である。
主演の高峰秀子さんが、泣き虫先生の大石先生を演じている。彼女が子供達と接する時に見せる優しい眼差しは、演技を超えた自愛に満ちた素晴らしい表情だ。子供達に訪れる不幸な出来事に共に涙を流してくれる心優しい先生を演じた彼女なしにこの映画は成り立たなかったと言っても過言ではないと思う。

有名なお話なので、今更だがこんなお話だ。

昭和3年、小豆島の岬の分教場に大石先生が赴任する。当時は女性が洋服を着て自転車に乗って学校へ来るのが珍しかった頃、物珍しさに島の人たちは今度のおなご先生は、モダンガールだと噂になる。大石先生は、小学校1年生の生徒12人の子供たちを受け持つことになる。出席を取りながら、一人一人の顔と名前を覚えていく。澄んだ瞳で返事をする子供達。
大石先生と子供達の30年に及ぶ物語が始まる。

岡田磯吉(ソンキ)
竹下竹一
徳田吉次(キッチン)
森岡正(サンコ)
相沢仁太(ニクタ)
香川マスノ
西口ミサ子(ミーさん)
川本松江(マッちゃん)
山石早苗
加部小ツル
木下富士子(フジちゃん)
片桐コトエ

大石先生は、子供達と歌を歌い、浜や野を駆け周り、子供達にとって掛け替えのない先生となっていく。そんなある日、子供達のいたずらで砂浜に作った落とし穴に落ち、足に怪我を負ってしまい、学校に来れなくなってしまう。先生を恋しがる子供達は、遠い道のりを歩き先生に会いにやってくる。そんな子供達を愛おしく思う大石先生。しかし、松葉杖を付き自転車に乗れなくなった先生は、分教場から近くの本校に変わらなければならなくなってしまう。そのことを告げるため分教場を訪れるのだが、彼女の姿を見た子供達は嬉しさに彼女の周りに駆け寄ってくる。本校に変わることを告げると泣きじゃくる子供達。子供達との思い出に浜辺で記念の写真を取り、5年後に本校で再開することを約束し、別れを告げる。



5年の間に、満州事変、上海事件が勃発し、世の中は不況の波に飲まれていた。大石先生も、船の機関士の男性と結婚した。分教場の子供達も6年生になって本校へやって来た。マッちゃんは、6年生になったらユリの花の絵が描かれたアルマイトのお弁当箱を買ってもらえると楽しみにしていた。しかし、父親は毎日毎日仕事をしても貧しく、母親は妹とを生んだ後、体調を崩し床に伏せており、そんな状態ではなかった。やがて、母親が亡くなり、妹も後を追うように命尽き、大阪の親戚に引き取られることになる。
時は過ぎ、修学旅行に訪れた金比羅さんの食堂で偶然マツエと再会する。今は引き取られた食堂の養母に使われる境遇になっていた。昔の仲間達が乗る船が去っていくのを岸壁で追いかけ、涙するマツエ。
やがて時勢は戦争へ突入していき、教え子のソンキ、竹一、キッチン、サンコ、ニクタ達や大石先生の夫も戦場に。頭の良かったコトエは、母親に孝行するため進学を断念し、家事をしていたが肺結核に倒れ命を落とす。家が貧しく修学旅行にも行けなかったフジちゃんは、家族で見知らぬ土地へ去ってしまいと、不幸が続く。不幸な出来事は止まらず、夫の戦死、娘が木から落ちて命を落とし、教え子達も戦死し、終戦を向かえる。
やっと平和なときが訪れ、子供達の卒業と同時に辞めていた教師に復職する大石先生。そんな彼女のために、大人に成長した子供達が、先生のために謝恩会を開く。12人いた子供達も今は7人に。戦争から生きて帰ってきたソンキも戦争で失明していた。そんな子供達が先生のために贈る自転車が、謝恩会の場に飾られていた。それを目にした大石先生が涙ぐむ。昔、浜辺で取った記念の写真を今は目が見えなくなったソンキが順に説明する。「手前にいるのが、ニクタにサンコ、その横が・・・」
雨の中、大石先生は合羽を着て子供達もらった自転車に跨り、颯爽と道を駆けていくシーンで映画は終わる。

怪我のため別れを告げにきた大石先生と生徒達との記念写真、マツエが去っていく船を見ながら嗚咽する場面、目の見えぬソンキが記念写真を説明する場面など涙を流さずには見れない哀しい映画だった。大石先生と子供達の心の絆を描いた素晴らしい作品だ。

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