クリント・イーストウッドは、『グラン・トリノ』を最後に積極的な映画出演はしない方針を語っている。
興味の湧く作品に巡り合わない限り出演はしないということだ。
イーストウッドの名が知られるようになったのは、テレビシリーズの『ローハイド』である。
その後、イタリアのセルジオ・レオーネ監督のもとで『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』などのマカロニ・ウエスタンで活躍した。
イーストウッドのヨーロッパでの人気が高まり、1960年代後半にアメリカでの俳優活動を再開する。
何本かの映画に出演した後、1970年に『マンハッタン無宿』でメガフォンを執ったドン・シーゲル監督とタッグを組んで作った作品が『ダーティハリー』である。
勧善懲悪のヒーローではなく、犯人を捕まえるためには手段を選ばぬアウトロー的な刑事ハリー・キャラハンが連続殺人鬼のスコルピオを追い詰めていくアクション映画だ。
当初はシナトラのために作られた作品だったそうだ。
ジョン・ウエイン、マックイーン、ポール・ニューマンなどの名前も上がったそうだが、最終的にはイーストウッドで落ち着いた。
もしもシナトラやジョン・ウエインがハリーを演じて、ここまでヒットしたかどうかは分からないが、イーストウッドでなければ、あの渋くてクールなハリーが生まれなかったのは間違いない。
有名なのは、ハリーが使用するS&W M23という拳銃だ。
通常は大型動物の狩猟に使用される銃で、装填される弾丸は.44マグナム弾という直径が11.2mmある弾丸で、最強の拳銃と言われた破壊力の高い拳銃である。
撮影に使用した銃の入手も困難であったため、最終的にはS&W社に直接依頼して、S映画用として特別に組み立ててもらったそうだ。
映画の中でも両手で構えて撃つスタイルで、その衝撃の強さが伝わってくる。
ハリーが、一発だけ弾丸が入っているかどうか分からないジュを持って、スコルピオに言うセリフは有名だ。
you've got to ask one question:"Do I feel lucky?" Well do ya, punk!
スコルピオ役のアンディ・ロビンソンの偏執的な迫真の演技が、この映画が成功した大きな要因になっている。
映画の後半にスクールバスを乗っ取り、子供達に歌う事を強要するシーンは鬼気迫るものがあった。
この映画の後、いろんな映画のオーディションを受けたが、映画のヒットもあり強烈なイメージが定着してしまい、オファーが全くこなかったそうだ。
ダーティハリーは大ヒットし、この後4作が作られるシリーズ作品となった。
クリント・イーストウッドといえば、ダーティハリーと誰もがいうイーストウッドの代表作である。
これを足掛けに数多くの作品に出演し、ビッグスターの地位を確立した。
また、イーストウッドは、『ダーティハリー』に出演する前から監督業にも興味を持ち『恐怖のメロディー』などの作品を世に送り出しており、当時から監督としての才能の片鱗を覗かせていた。
本格的に監督業に専念してから、『許されざる物』や『ミリオンダラー・ベイビー』と2度のオスカーに輝いている。
テレビ時代、マカロニ・ウエスタン、ダーティハリー、監督業と上り詰めたビッグスターだからこそ、あの深い皺の重厚な顔立ちがあるのだろう。
願くば、俳優活動をやめたなんて言わずに、渋い演技をまた見せて欲しい物だ。
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