2010年4月21日水曜日

世界映画名作全史



映画の楽しみは、鑑賞だけではない。
これは映画に限った事ではないが、キャストのプロフィールを知ったり、監督の他の作品や背景を知ると、更に新たな興味が湧いてくる。
アラン・ドロンやスティーブ・マックイーンが時々見せる寂しげな表情の背景には、少年時代に家族の温かさにふれることがなかった生い立ちが関係していると知ると、深みもましてくる。
チャールズ・ブロンソンやショーン・コネリーは、役者で大成するまでに数多くの職につき苦労した時代があって、あの素晴らしい肉体を築いたと知ると、ただのマッチョではないバイタリティーの根源を知ることが出来る。
カトリーヌ・ドヌーヴは、美しく撮らない作品は一切受けないらしく、どんな役柄でもこなす女優とはまた違ったプライドや威厳を持っているからこそ、常に大きな存在感を保っている。
そういう映画には現れない背景や思いを知らずとも映画は楽しめるが、知っているとまた違った楽しみが増える。

ここ最近、そういった情報はインターネットから入手できるようになったが、昔はそんな物はなかったから、大概は本に頼っていた。
スクリーンやロードショーといった雑誌はもちろんのこと、映画に関する本を読むことで、いろんな事を知った。
昔は、映画に関する本も豊富にあり、本屋でも今のアイドル本並のスペースを確保していた。
キネマ旬報の別冊ムックや、写真をふんだんに盛り込んだ芳賀書店のシネアルバムシリーズ、双葉十三郎さんの採点表など、評論物からビジュアル本にリファレンス本など様々な本があった。
シネアルバムなんかは、名前の通り本1冊丸ごとアラン・ドロンの写真とか、オードリー・ヘップバーンの写真で埋め尽くされ、何十巻にもなる人気のシリーズだった。当時人気のあったアラン・ドロンだけでも3、4巻はあったと思う。

そんな本の中でもお勧めは、世界映画名作全史と映画俳優全史である。
この本は、文庫本で発行された本で持ち歩いて電車の中でも読める手軽さが素晴らしい。
名作全史は、戦前・戦後・現代と時代ごとに分けられ、1975年頃までの作品の解説と寸評が書かれている。
普通こういうリファレンス本は、事実だけを書いて作品の良し悪しは書かないが、この本については、著者の思いが書かれていて、辞典というより読み物に近い感覚だ。
当然、読む人の思いと必ず一致する訳はないが、だからこそ自分の思いも浮かび上がってきて、読んでいて面白いのだ。



俳優全史は男優・女優の2冊に分かれていて、前半はメジャーな俳優についてのプロフィールや出演作が書かれていて、映画には現れない生い立ちも書かれている。
本書は、世界映画名作全史の著者である映画監督でもある猪俣勝人氏と田山力哉氏の共著である。
田山さんは、既に亡くなられた方だが、ご健在な頃は毒舌でも知られており、ビートたけしさんのTVタックルにも何度か出演されていた。
酒好きで破天荒、映画も良いものは良い悪いものは悪いと、はっきりというタイプの人物だった。
親交のあったビートたけしさんの作品に対しても、その姿勢は変わらなかったそうだ。
そういう姿勢の人物だからこそ、事実だけを淡々と書いてあるリファレンスとは違った面白さがあるのだ。
双葉十三郎さんの『ぼくの採点表』もまた、ごく短い寸評の中に氏の思いや映画に対する愛情が書かれていて、やはり素晴らしい本である。

スポーツにしろ、アートにせよ、どんな趣味もその対象物だけでないところに面白みがある物だ。
好きになればなるほど、その好奇心も大きくなり、際限もなくなる。
少し昔の本なので、今も売っているかどうかは知らないが、アラフォー以上の年代には懐かしい名前の役者や作品が並んでいて、嬉しくなることは間違いない。
お勧めの本である。

- Posted using BlogPress from my iPodTouch


0 件のコメント:

コメントを投稿